| Q:産業廃棄物処分業の許可は、他人に譲渡したり、承継したりすることができる? A:業許可は他人に譲渡したり承継したりすることはできない。 |
許可の譲渡や承継ができないと事業承継がうまくいかないじゃない?
産業廃棄物処分業の許可を他社に譲渡したい、あるいは他社から引き継ぎたいというニーズは、M&Aや事業再編の場面で生じることかと思います。しかし、廃棄物処理法の仕組みを正確に理解していないと、知らないうちに無許可営業という重大な法律違反を犯してしまうことになります。
今回も、条文に基づきながら、処分業の許可が譲渡・承継できない理由を解説します。
産業廃棄物処分業の許可とは
産業廃棄物処分業の許可は、廃棄物処理法第14条第6項に根拠があります。
(産業廃棄物処理業)
廃棄物処理法第14条第6項
産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を処分する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
この許可は、「処分を業として行う者」に対して都道府県知事等が個別に与えるものです。許可証に記載された事業者の名称・住所・許可番号が示すとおり、許可はその事業者固有のものとして発行されています。
この許可を取得するには、許可基準を満たす必要があります。
許可基準とは─なぜ「会社の能力」が問われるのか
許可が取得できる会社とそうでない会社を区別する基準が「許可基準」です。処分業の許可基準は、法第14条第10項および廃棄物処理法施行規則第10条の4に規定されています。
(産業廃棄物処理業)
廃棄物処理法第14条第10項
都道府県知事は、第6項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
二 申請者が第7条第5項第4号イからへまでのいずれにも該当しないこと。
第1号では施設・能力に関するハード面の適合性を、第2号では欠格要件(役員の犯罪歴、暴力団関係など)に関するソフト面の適合性を確認しています。
つまり、許可は「その申請した会社がこれらの基準を満たしているかどうか」を審査した上で与えられるものです。他の会社が同じ基準を満たしているかどうかは別問題であるため、許可を移すには改めて許可基準に適合するかを審査する必要があります。
廃棄物処理法には、産業廃棄物収集運搬業や処分業の「業許可」を他者に譲渡・承継することを認める規定がそもそも存在しません。
一方で、廃棄物処理法において譲渡や承継が可能な許可がありますので、次の章で解説します。
「事業の一部だけ譲渡したい」「個人事業から法人に切り替えたい」という場合、業許可に関しては譲渡や承継はできません。その場合、新規に許可を取得するしかありません。
処理施設の許可との違い──ここが最大の注意点
廃棄物処理法において、譲渡、承継が可能な許可は「産業廃棄物処理施設の許可」です。
詳細には「譲り受け、借り受け」という制度です。それでは、処理施設の許可制度について確認します。
処理施設の許可とは
破砕施設、焼却炉、最終処分場など一定規模以上の処理施設を設置する場合には、施設設置に関する別途の許可が必要です。この許可は「その施設が技術上の基準に適合しているか」を審査するものです。
(産業廃棄物処理施設)
廃棄物処理法第15条第1項
産業廃棄物処理施設(廃プラスチック類処理施設、産業廃棄物の最終処分場その他の産業廃棄物の処理施設で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は、当該産業廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。
施設の許可には「譲り受け・借り受け」制度がある
処理施設の許可については、法第15条の4で「譲り受け・借り受け」の手続きが定められています。
(準用)
廃棄物処理法 第15条の4
第9条の4の規定は産業廃棄物処理施設の設置者について、第9条の5から第9条の7までの規定は産業廃棄物処理施設について準用する。この場合において、第9条の4中「一般廃棄物処理施設」とあるのは「産業廃棄物処理施設」と、第9条の5第1項中「第8条第1項」とあるのは「第15条第1項」と、同条第2項及び第9条の6第2項中「第8条の2第1項」とあるのは「第15条の2第1項」と読み替えるものとする。
(一般廃棄物処理施設の譲受け等)
廃棄物処理法第9条の5
第8条第1項の許可を受けた者(第3項及び次条第1項において「許可施設設置者」という。)から当該許可に係る一般廃棄物処理施設を譲り受け、又は借り受けようとする者は、環境省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 略
3 第1項の許可を受けて一般廃棄物処理施設を譲り受け、又は借り受けた者は、当該一般廃棄物処理施設に係る許可施設設置者の地位を承継する。
これが認められている理由は、施設の許可が「施設そのものの安全性・適合性」に対して与えられるものだからです。施設が技術基準を満たしていれば、それを扱う会社が変わっても問題は生じにくい、という考え方に基づいています。
施設を譲り受けても、処分業の許可は別途必要
ここが最も重要なポイントです。
無許可で処分業を行った場合、廃棄物処理法第25条第1項第1号により、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方という重い刑事罰の対象となります。
処理施設の許可(法第15条)を譲り受けても、処分業の許可(法第14条第6項)は自動的に引き継がれません。施設を正式に譲り受けた会社が処分業を営むためには、改めて処分業の許可申請を行う必要があります。
業許可と施設許可の譲渡、承継制度について以下表にまとめます。
| 許可の種類 | 譲渡・承継・譲り受け |
|---|---|
| 産業廃棄物処分業の許可(業許可:法第14条第6項) | ✕ 譲渡・承継できない |
| 産業廃棄物収集運搬業の許可(業許可:法第14条第1項) | ✕ 譲渡・承継できない |
| 産業廃棄物処理施設の許可(法第15条) | ○ 都道府県知事の許可のもと譲り受け・借り受けが可能 |
実務上の注意点
排出事業者の方へ 委託している処分業者から「許可を別の会社に譲った」「承継した」という説明を受けた場合は、その説明を鵜吞みにせず、必ず新しい会社の許可証の写しを確認してください。有効な処分業の許可がない業者に委託した場合、排出事業者も委託基準違反に問われる可能性があります。
許可を取得したい事業者の方へ 「処分業の許可を譲ってもらえる」という話には乗らないでください。そのような制度はなく、詐欺的なトラブルに発展するリスクがあります。処分業の許可は、正規の申請手続きを経て取得するものです。
M&A・事業承継の場面では 処分業を含む事業を買収・承継する際は、処理施設の許可の引き継ぎ手続きと、処分業の許可の新規申請を並行して進める必要があります。許認可のスケジュールが事業開始の日程に影響するため、早期に専門家(行政書士等)に相談することを強くお勧めします。
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