排出事業者の本店所在地で契約している場合、支店(所在地は本店と同一都道府県内)から発生する産業廃棄物については、改めて支店を排出場所とする契約書の作成が必要?
尾上雅典
この記事の執筆者
尾上雅典
行政書士 / 廃棄物法務コンサルタント
「廃棄物実務クエスト」共同執筆者
Q:排出事業者の本店所在地で契約している場合、支店(所在地は本店と同一都道府県内)から発生する産業廃棄物については、改めて支店を排出場所とする契約書の作成が必要?
A:支店が増えたことだけを理由として、契約書を再作成する必要はありません。
疑問

産業廃棄物の発生場所が増えるのだから、契約書の再作成が必要になるんじゃないの?

工場や営業所など複数の拠点を持つ企業では、「本店で締結した委託契約書は、支店から発生する産業廃棄物にも有効なのか」「拠点が増えるたびに契約を作り直さなければならないのか」といった疑問がよく寄せられます。

結論は、

排出事業者が同一の法人である限り、本店で締結した委託契約書で支店から発生する産業廃棄物も委託することができ、改めて支店を排出場所とした契約書を作成する必要はありません。

その理由を、法律の規定に沿って整理していきます。

「排出事業者」は法人そのものを指す

産業廃棄物の処理を委託する場合、排出事業者には書面による委託契約の締結義務があります(廃棄物処理法第12条第6項、施行令第6条の2、施行規則第8条の4の2)。

ここでいう「排出事業者」とは、本店・支店・工場といった個々の事業場ではなく、法人格(会社そのもの)を指します。

委託契約は法人として締結するものであり、契約上の排出事業者責任も法人全体が負担します。

そのため、本店の代表者が締結した契約であっても、支店長や工場長が現場で締結した契約であっても、いずれも「同一の法人」が締結した契約として扱われます。

同一法人内であれば、本店で結んだ一つの契約書で、支店から発生する産業廃棄物の委託をカバーできることになります。

なお、これはあくまで同一法人格であることが前提で、法人格の異なる子会社や関連会社から発生する産業廃棄物を、親会社の契約でまとめて委託することは原則できません。

「排出事業場(排出場所)」は委託契約書の法定記載事項ではない

支店ごとの契約が不要となるもう一つの根拠が、法定記載事項に「排出場所」が含まれていないという点です。

委託契約書に記載しなければならない法定事項は、施行令第6条の2第4号および施行規則第8条の4の2に列挙されています。

産業廃棄物処理委託契約書の法定記載事項は「廃棄物の種類・数量」「運搬の最終目的地」「処分・再生の場所・方法・処理能力」などであり、「産業廃棄物を排出した事業場(=排出場所)の所在地」は含まれていません。

一方で、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の法定記載事項には「産業廃棄物を排出した事業場の名称及び所在地」が定められています。

つまり、排出場所はマニフェスト側で特定される仕組みになっており、委託契約書に排出場所が書かれていなくても廃棄物のトレーサビリティは担保されます。

したがって、支店から産業廃棄物が発生するようになったからといって、「支店を排出場所とする契約書」を新たに作成しなければならない、という法律上の義務はありません。

※ただし、支店では本店と異なる産業廃棄物の種類が新たに発生するという場合は、「新しく発生する産業廃棄物の種類」に関する契約変更または契約書の再作成などが必要となります。

「同一都道府県内」であることがポイント

この設問でわざわざ「支店の所在地は本店と同一都道府県内」と条件づけられているのには理由があります。

それは、収集運搬業の許可が(実質的には)都道府県単位で与えられているためです。
※「積替え保管を含む収集運搬業」の場合は、政令市も許可権者となります。

収集運搬の委託契約では、添付すべき許可証(収集運搬業の許可証)を特定する必要があります。

収集運搬業の許可は、廃棄物の積込み地と荷降ろし地それぞれの都道府県・政令市の許可が必要とされています。

支店が本店と同一都道府県内にある場合

本店からの収集運搬をカバーしている収集運搬業者の許可が、そのまま支店にも及びます。

この場合は、許可証の差し替え・追加は通常不要であり、改めて契約書を作成・変更する必要はありません。

支店が別の都道府県にある場合

収集運搬業者が支店の位置する都道府県の許可を有しているかの確認が必要となり、許可がある場合は許可証の写しの添付が必要です。

もしも、その業者が、支店所在地の許可を持たない場合は、支店の産業廃棄物の運搬を委託できませんので、別の適切な収集運搬業者と契約を行う必要があります。

また、先述したとおり、産業廃棄物の発生場所(積み込み地)は委託契約書の法定記載事項ではありませんが、マニフェストの記載との一体性を担保するために、契約対象となる積み込み地(今回の例では、「本店の所在地」と「支店の所在地」)を委託契約書上に明示し、それぞれの積み込み地に対応した許可証の写しの添付を間違いなく行えるようにしておきたいところです。

実務上の対応ポイント

法律上は支店ごとの契約書作成が不要であっても、実務では次の点に留意しておくと運用がスムーズになります。

(1)契約書の「排出事業場欄」は包括的に記載しておく

法定記載事項ではないものの、多くの委託契約書には任意で排出事業場を記載する欄が設けられています。ここに具体的な住所を1か所だけ書いてしまうと、支店追加のたびに変更が必要かのように見えてしまいます。

「○○県内の各事業所」などの包括的な記載も有効です。

(2)排出事業場を追加する場合は覚書・通知で対応

契約の途中で排出事業場を明確に加えたい場合は、契約を巻き直すのではなく、排出事業者から処理業者へ追加したい事業場を通知し、双方が承諾のうえ通知書面を契約書とあわせて保管する方法でも差し支えありません。
※ただし、これは元々の委託契約の範囲内の排出事業場に限っての話で、契約対象となっていない都道府県の排出事業場を加える場合は、変更契約や覚書の作成が不可欠です。

(3)マニフェストは排出事業場ごとに交付・管理する

マニフェストは排出事業場ごとに交付する必要があります。

同一車両で複数の排出事業場から積み合わせて収集・運搬する場合でも、マニフェストは事業場ごとの交付が必要です。

尾上雅典
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尾上雅典

行政書士 / 廃棄物法務コンサルタント

廃棄物処理法、委託基準、処理委託契約、許可実務などを中心に、制度の構造と実務判断を整理しています。

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