| Q:農家自身が廃プラスチック類を処分業者に持ち込む場合は、マニフェストは不要である? A:処分委託しているので、処分業者に対してマニフェストの交付が必要 |
農家自身で運搬しているのに、なぜマニフェストの交付が必要なの?
農家自身が廃プラスチック類を処分業者まで自ら運搬したとしても、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付は必要です。
このケースでは、
運搬の過程では、自ら運搬であるため収集運搬を他者に委託していることにはなりませんが、
処分業者に処分を委託しているため、マニフェストの交付義務は発生します。
法的根拠
廃棄物処理法第12条の3第1項は、事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者が、その産業廃棄物の運搬または処分を他人に委託する場合には、委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時にマニフェストを交付しなければならないと定めています。
ここで重要なのは、条文が「運搬又は処分を委託する場合」としている点です。運搬と処分は別個の行為として規定されており、いずれか一方だけを他人に委託した場合でも、この規定の対象となります。
したがって、次のように整理できます。
- 運搬・処分の両方を自ら行う(自社運搬・自社処分) → 委託行為自体が存在しないため、マニフェスト交付義務は生じない
- 運搬のみを自ら行い、処分を処分業者に委託する → 処分の委託が存在するため、マニフェスト交付義務が生じる
- 運搬・処分の両方を業者に委託する → 通常どおりマニフェスト交付義務が生じる
農家が廃プラスチック類を車両等で処分業者まで持ち込むケースは、上記の2番目「運搬のみ自社で行い、処分を委託する」パターンに該当します。
運搬は自社運搬であっても、処分業者に処分を委託している以上、農家にはマニフェストの交付義務があります。
「自社運搬だからマニフェスト不要」という誤解が生じる理由
自社運搬に関する誤解の多くは、廃棄物処理法第12条第1項ただし書きに定められた「排出事業者が自ら運搬する場合は収集運搬業の許可が不要である」という規定と、マニフェストの交付義務とを混同することから生じます。
収集運搬業の許可が不要になるのは、あくまでも運搬行為について事業者自身が行う場合の話であり、これはマニフェスト制度とは別の規定です。
農家が自ら軽トラック等で廃プラスチック類を処分業者の施設まで運び込む行為は、収集運搬業の許可という観点では「自ら運搬」として扱われ許可不要となり得ますが、その先の処分行為を処分業者に委託している以上、処分委託に対応するマニフェストの交付義務は別途発生します。
農家は「事業者」に該当するか
廃棄物処理法上、マニフェスト交付義務を負うのは「その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者」です。
農業も事業活動の一種であり、農業経営に伴って生じる廃プラスチック類(農業用ビニールハウスの被覆材、マルチフィルムなど)は産業廃棄物に該当します。
これを排出する農家は、法律上の「排出事業者」として扱われ、法人か個人事業か、規模の大小にかかわらず、他の業種の事業者と同様にマニフェスト交付義務の対象となります。
「農家だから」「個人だから」という理由でマニフェスト制度の適用が除外されることはありません。
実務上の注意点:使用するマニフェスト伝票の種類
運搬のみを自社で行い、処分のみを処分業者に委託する場合は、通常の運搬・処分双方を委託するケースとはマニフェストの運用が一部異なります。
具体的には、A票・C1票・C2票・D票・E票を用いる運用となり、運搬受託者に関する記載欄(B1票・B2票に相当する部分)は使用しません。
この場合、マニフェストの「運搬を受託した者の氏名又は名称及び住所」欄は記載不要となるため、斜線を引くか「自社運搬」である旨を備考欄に明記しておくと、後日の確認がしやすくなります。
また、処分業者との間では、産業廃棄物処理委託契約を書面で締結する必要があります。運搬を自社で行う場合であっても、処分部分についての委託契約書は別途必要である点にも注意が必要です。
まとめ
農家が廃プラスチック類を自ら処分業者まで持ち込む場合、運搬行為自体は自社運搬として収集運搬業の許可が不要ですが、処分そのものは処分業者への委託にあたるため、廃棄物処理法第12条の3に基づきマニフェストの交付が必要です。
マニフェストの要否は、「運搬または処分を他人に委託しているか」で判断されるという点を押さえておくことが、実務上の誤解を防ぐ鍵となります。
この場合は、処分のみを委託する際の運用(A票・C1票・C2票・D票・E票)に沿ってマニフェストを交付し、5年間保存する義務も負うことになります。
廃棄物に関する法務・実務のご相談はこちら
尾上雅典に直接相談する





