
Q:委託先処理業者の処理状況確認を怠ると、委託基準違反として刑事罰の対象になる? A:処理状況確認は罰則無しの努力義務の対象なので、怠った場合でも刑事罰が科されることはありません。ただし、措置命令の対象にはなり得るので、着実に実行しましょう。 |

処理状況確認は委託基準の一環なのに、なぜ刑事罰の対象にならないの?
「委託先処理業者の処理状況確認」は、委託基準の一つではありますが、「許可業者への委託(廃棄物処理法第12条第5項)」と「委託契約書の作成と保存(廃棄物処理法第12条第6項)」とは別の条文の「廃棄物処理法第12条第7項」で規定されています。
第12条(事業者の処理) 事業者は、自らその産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。第5項から第7項までを除き、以下この条において同じ。)の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(当該基準において海洋を投入処分の場所とすることができる産業廃棄物を定めた場合における当該産業廃棄物にあつては、その投入の場所及び方法が海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた場合におけるその投入の場所及び方法に関する基準を除く。以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。
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5 事業者(中間処理業者(発生から最終処分(埋立処分、海洋投入処分(海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた海洋への投入の場所及び方法に関する基準に従つて行う処分をいう。)又は再生をいう。以下同じ。)が終了するまでの一連の処理の行程の中途において産業廃棄物を処分する者をいう。以下同じ。)を含む。次項及び第7項並びに次条第5項から第7項までにおいて同じ。)は、その産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除くものとし、中間処理産業廃棄物(発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程の中途において産業廃棄物を処分した後の産業廃棄物をいう。以下同じ。)を含む。次項及び第7項において同じ。)の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。
6 事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。
7 事業者は、前2項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
法第12条第5項違反は、法第25条の「5年以下の拘禁刑もしくは1千万円以下の罰金、またはこの併科」の対象
法第12条第6項違反は、法第26条の「3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこの併科」の対象
法第12条第7項は「努めなければならない」という「努力義務」のため、刑事罰の適用対象とはされていません。
※「拘禁刑って何?」と思った方は、筆者が執筆した下記の記事をご参照ください。
コウキンの乱
そのため、「処理状況の確認」を怠った場合でも、それだけで刑事罰の適用対象となることはありません。
ただし、処理状況確認を怠った結果、産業廃棄物の不適正処理が発生した場合、法第19条の6の措置命令の対象になる可能性があります。
廃棄物処理法第19条の6
前条第1項に規定する場合において、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあり、かつ、次の各号のいずれにも該当すると認められるときは、都道府県知事は、その事業活動に伴い当該産業廃棄物を生じた事業者(当該産業廃棄物が中間処理産業廃棄物である場合にあつては当該産業廃棄物に係る産業廃棄物の発生から当該処分に至るまでの一連の処理の行程における事業者及び中間処理業者とし、当該収集、運搬又は処分が第15条の4の3第1項の認定を受けた者の委託に係る収集、運搬又は処分である場合にあつては当該産業廃棄物に係る事業者及び当該認定を受けた者とし、処分者等を除く。以下「排出事業者等」という。)に対し、期限を定めて、支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。この場合において、当該支障の除去等の措置は、当該産業廃棄物の性状、数量、収集、運搬又は処分の方法その他の事情からみて相当な範囲内のものでなければならない。
一 処分者等の資力その他の事情からみて、処分者等のみによつては、支障の除去等の措置を講ずることが困難であり、又は講じても十分でないとき。
二 排出事業者等が当該産業廃棄物の処理に関し適正な対価を負担していないとき、当該収集、運搬又は処分が行われることを知り、又は知ることができたときその他第12条第7項、第12条の2第7項及び第15条の4の3第3項において準用する第9条の9第9項の規定の趣旨に照らし排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせることが適当であるとき。
廃棄物処理法第19条の6に基づく措置命令は、第19条の5の措置命令とは異なり、排出事業者側に委託基準違反が無かった場合でも発出することが可能です。
信頼性の高い処理業者を選ぶためには、実際に処理業者の事業場を訪問し、廃棄物処理法に則った操業が行われているかどうかを確認する必要があり、それを怠ると、不法投棄に巻き込まれることが多々ありますので、刑事罰の有無と関係無く、可能な範囲で処理状況確認を実行する方が得策です。