
Q:産業廃棄物の処理を他人に委託する場合、書面による契約に限らず、口頭による契約でもよい? A:✕ 法律上、書面による契約でないと違法です。 |
廃棄物の契約に関わらず、「契約」というのは日常生活でも頻繁に行われています。
みなさんに身近な契約の例としては、スーパーなどにいって商品を買う【売買契約】やアパートを借りる際に行う【賃貸借契約】などです。「契約」とは、これらの例のように口頭や両者の合意で完結するものから書面による契約など様々です。
民法では、「契約」を次のように定義しています。
(契約の締結及び内容の自由)
第521条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。(契約の成立と方式)
民法(明治二十九年法律第八十九号)
第522条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
先ほど例に出したスーパーでの買い物でわざわざ契約内容を決めて書面で契約を結んでいたら、迅速な商取引の妨げになります。よって、契約内容は自由であり、書面がなくても相手方の承諾さえあれば契約は成立することになります。

民法でそう決まってるんだったら廃棄物の契約も口頭で自由に契約できるんじゃないの?
ただし、産業廃棄物の委託契約では、そうはいきません。民法に「法令の制限内において」や「法令に特別の定めがある場合を除き」とあるように他の法律の制限を受ける場合は例外です。
廃棄物処理法では、契約の締結を法律上どのように規定しているか条文を確認しましょう。
(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号)
第6条の2 法第十二条第六項の政令で定める基準は、次のとおりとする。
(中略)
4 委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。
イ 委託する産業廃棄物の種類及び数量
ロ 産業廃棄物の運搬を委託するときは、運搬の最終目的地の所在地
ハ 産業廃棄物の処分又は再生を委託するときは、その処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力
ニ 産業廃棄物の処分又は再生を委託する場合において、当該産業廃棄物が法第十五条の四の五第一項の許可を受けて輸入された廃棄物であるときは、その旨
ホ 産業廃棄物の処分を委託するときは、当該産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力
ヘ その他環境省令で定める事項
産業廃棄物の処理を委託する契約は、書面である必要があり、さらに契約の内容も廃棄物処理法で規定されています。
これは、産業廃棄物という性質上、ぞんざいに扱われることが予定されているため、排出事業者責任の一貫として委託した契約内容に責任を持つという側面から法律で定めていると考えられます。
委託契約書の記載内容(法定記載事項)については、尾上先生が執筆されました 2024年6月14日付「産業廃棄物処理委託契約書には、委託先業者が加入する保険の内容を記載しなければならない?」 をご確認ください。
なお、DXの時代に電子契約ではダメなのかという疑問があると思いますが、e文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)によって、電子の契約書も認められています。