産業廃棄物が大量に保管されているイメージ
橋本啓太
この記事の執筆者
橋本啓太
行政書士 / 廃棄物実務・運用アドバイザー
「廃棄物実務クエスト」共同執筆者
Q:産業廃棄物処分業者が保管する産業廃棄物の数量は、処理施設の1日当たりの処理能力によって制限される?

A:処分業者が保管する産業廃棄物の数量は、処理施設の1日当たりの処理能力に制限される。
疑問

処理能力のどれくらい保管できるの?

産業廃棄物処分業者が処分を行う産業廃棄物の保管量には、法律上の上限が設けられています。その上限は、処理施設の1日当たりの処理能力を基準として算出されます。

それでは、今回も根拠条文を確認しながら解説していきます。保管上限の根拠は、以下条文に定められています。

(産業廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)
廃棄物処理法施行令第6条 
 法第12条第1項の規定による産業廃棄物の収集、運搬及び処分(再生を含む。)の基準は、次のとおりとする。
一 略
 イ ~ へ 略
二 産業廃棄物の処分(埋立処分及び海洋投入処分を除く。以下この号において同じ。)又は再生に当たつては、次によること。
 イ 第3条第1号イ及びロ並びに第二号イ及びロの規定の例によること。
 ロ 産業廃棄物の保管を行う場合には、次によること。
 (1) 第3条第1号リの規定の例によること。
 (2) 環境省令で定める期間を超えて保管を行つてはならないこと。
 (3) 保管する産業廃棄物(当該産業廃棄物に係る処理施設が同時に当該産業廃棄物と同様の性状を有する一般廃棄物として環境省令で定めるものの処理施設である場合にあつては、当該一般廃棄物を含む。)の数量が、当該産業廃棄物に係る処理施設の一日当たりの処理能力に相当する数量に十四を乗じて得られる数量(環境省令で定める場合にあつては、環境省令で定める数量)を超えないようにすること。

例えば、1日当たりの処理能力が10トンの施設であれば、保管できる産業廃棄物の上限は、
10トン/日×14=140トン
となります。
つまり、保管できる上限数量=処理施設の1日当たり処理能力×14日分となります。

処理能力が高い施設ほど多くの廃棄物を保管できる一方、処理能力が低い施設は少量しか保管できないという仕組みです。

なぜ「14日分」なのか

廃棄物処理法で産業廃棄物の処分(保管)の上限が「14日分」と定められている主な理由は、以下2点が考えられます。

適正処理の確保
廃棄物が過剰に滞留し、処理施設が機能不全に陥ることを防ぐため、処理能力に見合った適正な処理サイクルを維持させる必要があります。

②不法投棄の防止
処理能力を超えた廃棄物を「保管」と称して長期間滞留させることは、実質的な放置や不法投棄につながるおそれがあります。

実務上、収集・運搬から最終処分まではある程度の時間的ラグが生じることは避けられません。急な設備トラブルや天候・搬入スケジュールの変動にも対応できるよう、一定量の保管は必要です。
一方で、無制限に保管を認めると、処理が追いつかない状態で廃棄物が蓄積し続けるリスクが高まります。

「14日分」という基準は、こうした現場の実態と適正管理のバランスを踏まえて設定されたものと考えられます。

収集運搬業者との違い

産業廃棄物の保管基準は、処分業者だけでなく収集運搬業者にも設けられていますが、その基準は異なります。

収集運搬業者が積替え・保管を行う場合の保管数量の上限は、1日当たりの平均的な搬出量に7日を乗じた数量(搬出量の7日分)が目安とされています。

(産業廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)
廃棄物処理法施行令第6条 
 法第12条第1項の規定による産業廃棄物の収集、運搬及び処分(再生を含む。)の基準は、次のとおりとする。
一 略
イ ~ 二 略
ホ 産業廃棄物の保管を行う場合には、第3条第1号チ及びリの規定の例によるほか、当該保管する産業廃棄物の数量が、環境省令で定める場合を除き、当該保管の場所における一日当たりの平均的な搬出量に七を乗じて得られる数量を超えないようにすること。

このように、
処分業者は「処理能力×14日」
収集運搬業者は「搬出量×7日」
という形で、それぞれの業態に応じた異なる基準が設けられています。両者を混同しないよう注意が必要です。

実務上の注意点

(1)処理能力の変更時は保管上限も連動

処理施設の処理能力が変更(増強・縮小・設備の老朽化による実質的な低下など)された場合、保管可能な上限数量も連動して変わります。施設の新規設置や変更許可申請を行った際は、あわせて保管数量の上限も見直すことが重要です。

(2)行政の立入検査における確認事項

行政による立入検査では、保管数量が法定上限を超えていないかどうかが重要なチェック項目のひとつとなります。超過が確認された場合、改善命令の対象となる可能性があり、悪質な場合は事業停止命令につながる可能性もあります。

(3)帳簿・管理台帳による記録管理の徹底

処分業者は廃棄物処理法に基づき、産業廃棄物の受入量・処分量・持出量を帳簿に記録・保存する義務があります。保管数量の法定上限との照合ができるよう、日々の数量管理を正確に行うことが求められます。

(4)マニフェスト(産業廃棄物管理票)との整合性

産業廃棄物の受入れ・処分にはマニフェスト制度が適用されます。保管数量が増加している状況においては、マニフェストの交付・回付状況と実際の保管状況が整合しているかどうかを定期的に確認することが、コンプライアンス管理上のポイントとなります。

まとめ

産業廃棄物処分業者が保管できる廃棄物の数量は、処理施設の1日当たりの処理能力の14日分以内と法令で定められています。

この規制は、
・不法投棄の防止
・生活環境の保全
・適正処理の確保
という廃棄物処理法の根幹を支えるの重要なルールです。処分業者は自社施設の処理能力を正確に把握したうえで、日々の受入量・保管量の管理を徹底する必要があります。

廃棄物処理業の許可申請・更新、コンプライアンス体制の整備についてご不明な点がある方は、専門家(行政書士・環境コンサルタント等)へのご相談をおすすめします。

橋本啓太
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橋本啓太

行政書士 / 廃棄物実務・運用アドバイザー

マニフェスト、委託契約、現場運用、社内実務フローなどを中心に、実務に落とし込む視点から論点を整理しています。

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