
Q:屋内で産業廃棄物を保管する場合でも、保管場所を示す掲示板には「保管の高さ」の記載が必要である? A:屋内で保管をする場合は、「保管の高さ」の記載は必要ではありません。 |

市販されている掲示板には「保管の高さ」って必ず書かれているのに、なぜ屋内での保管だと記載不要になるの?
実務の細かい部分を理解するためには、法律の条文という直接の根拠規定を参照することが不可欠となりますので、今回も条文の規定を参照することから始めていきます。
「産業廃棄物保管基準」が規定された条文は、廃棄物処理法第12条第2項です。
廃棄物処理法第12条
2 事業者は、その産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準(以下「産業廃棄物保管基準」という。)に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければならない。
「環境省令で定める技術上の基準(産業廃棄物保管基準)」の詳細は、廃棄物処理法施行規則第8条となります。
条文自体が長いので、赤字で書いた部分だけを拾い読みしていただいて結構です。
廃棄物処理法施行規則第8条(第一号)
法第12条第2項の規定による産業廃棄物保管基準は、次のとおりとする。
一 保管は、次に掲げる要件を満たす場所で行うこと。
イ 周囲に囲い(保管する産業廃棄物の荷重が直接当該囲いにかかる構造である場合にあつては、当該荷重に対して構造耐力上安全であるものに限る。)が設けられていること。
ロ 見やすい箇所に次に掲げる要件を備えた掲示板が設けられていること。
(1) 縦及び横それぞれ60センチメートル以上であること。
(2) 次に掲げる事項を表示したものであること。
(イ) 産業廃棄物の保管の場所である旨
(ロ) 保管する産業廃棄物の種類(当該産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨を含む。)
(ハ) 保管の場所の管理者の氏名又は名称及び連絡先
(ニ) 屋外において産業廃棄物を容器を用いずに保管する場合にあつては、次号ロに規定する高さのうち最高のもの
「屋外」かつ「容器を用いずに保管」する場合のみ、「次号(廃棄物処理法施行規則第8条第二号)」に該当する「最高の高さ」を掲示板に記載する必要があります。
廃棄物処理法施行規則第8条(第二号)
二 保管の場所から産業廃棄物が飛散し、流出し、及び地下に浸透し、並びに悪臭が発散しないように次に掲げる措置を講ずること。
イ (略)
ロ 屋外において産業廃棄物を容器を用いずに保管する場合にあつては、積み上げられた産業廃棄物の高さが、保管の場所の各部分について次の(1)及び(2)に掲げる場合に応じ、当該(1)及び(2)に定める高さを超えないようにすること。
(1) 保管の場所の囲いに保管する産業廃棄物の荷重が直接かかる構造である部分(以下この条において「直接負荷部分」という。)がない場合 当該保管の場所の任意の点ごとに、地盤面から、当該点を通る鉛直線と当該保管の場所の囲いの下端(当該下端が地盤面に接していない場合にあつては、当該下端を鉛直方向に延長した面と地盤面との交線)を通り水平面に対し上方に五十パーセントの勾配を有する面との交点(当該点が二以上ある場合にあつては、最も地盤面に近いもの)までの高さ
(2) 保管の場所の囲いに直接負荷部分がある場合 次の(イ)及び(ロ)に掲げる部分に応じ、当該(イ)及び(ロ)に定める高さ
(イ) 直接負荷部分の上端から下方に垂直距離五十センチメートルの線(直接負荷部分に係る囲いの高さが五十センチメートルに満たない場合にあつては、その下端)(以下この条において「基準線」という。)から当該保管の場所の側に水平距離二メートル以内の部分 当該二メートル以内の部分の任意の点ごとに、次の(i)に規定する高さ(当該保管の場所の囲いに直接負荷部分でない部分がある場合にあつては、(i)又は(ii)に規定する高さのうちいずれか低いもの)
(i) 地盤面から、当該点を通る鉛直線と当該鉛直線への水平距離が最も小さい基準線を通る水平面との交点までの高さ
(ii) (1)に規定する高さ
(ロ) 基準線から当該保管の場所の側に水平距離二メートルを超える部分 当該二メートルを超える部分内の任意の点ごとに、次の(i)に規定する高さ(当該保管の場所の囲いに直接負荷部分でない部分がある場合にあつては、(i)又は(ii)に規定する高さのうちいずれか低いもの)
(i) 当該点から、当該点を通る鉛直線と、基準線から当該保管の場所の側に水平距離二メートルの線を通り水平面に対し上方に五十パーセントの勾配を有する面との交点(当該交点が二以上ある場合にあつては、最も地盤面に近いもの)までの高さ
(ii) (1)に規定する高さ
ハ (略)
長々と「廃棄物処理法施行規則第8条第二号」を引用しましたが、「屋内保管」の場合は、「屋外において産業廃棄物を容器を用いずに保管」に該当しませんので、「産業廃棄物保管場所を示す掲示板」に「保管の高さ」を記載する必要がありません。

「知識は無いが根拠不明な自負心だけはある」行政官やISO審査員から、屋内保管なのに「保管の高さが書かれていないのは違法だ!」と法律的に間違った指摘を受けて困っている、という話をよく聞きます。
4月は年度替わりのため、こうした自負心(だけ)豊富な新人が世に解き放たれ、皆様の目の前に現れる確率が高くなります。
※ここでいう「新人」とは、社会人の経験年数に関係なく、「その業務を担当した経験年数が乏しい人」を指していますので、現実では「50代の新人」という最悪のパターンが多々あります。
そんな困ったちゃんと出くわした場合は、今回ご紹介した廃棄物処理法の条文を示し、自発的な是正を促してみてください。
関連記事 当ブログ 2025年1月10日付 「産業廃棄物保管場所の掲示板には保管高さを必ず記載する必要がある?」