電子マニフェストのイメージ図
Q:特別管理産業廃棄物の多量に排出する事業者は、電子マニフェストの使用が義務化されている?

A:〇(特別管理産業廃棄物の多量排出事業者(年間50t以上を排出する事業者)は、電子マニフェストの使用が義務化されている。)

産業廃棄物管理票(マニフェスト)は、産業廃棄物や特別管理産業廃棄物を排出する際に切っても切り離せないものです。
世の中の電子化の流れで電子マニフェストの普及が著しい現代ですが、まだまだ紙マニフェストも多く使用されています。そんな中、電子マニフェストのさらなる普及に向けて一部の排出事業者は、その使用が義務化されています。

本題に入る前にまずは、「特別管理産業廃棄物」とは何か改めて定義を確認しましょう。

(定義)
第2条

5 この法律において「特別管理産業廃棄物」とは、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるものをいう。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)

産業廃棄物のうち、特に危険な廃棄物が「特別管理産業廃棄物」というわけです。
その中でも特に病院等などの医療機関から発生する注射針や血液の付着したガーゼなど「医療系廃棄物(感染性廃棄物)」がイメージしやすいと思います。

それでは、今回のクイズにあった特別管理産業廃棄物のみが電子マニフェストの義務となっている根拠条文を確認しましょう。

(電子情報処理組織の使用)
第12条の5
 第12条の3第1項に規定する事業者であつて、その事業活動に伴い多量の産業廃棄物(その運搬又は処分の状況を速やかに把握する必要があるものとして環境省令で定めるもの【①】に限る。)を生ずる事業場を設置している事業者として環境省令で定めるもの【②】は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、運搬受託者及び処分受託者から電子情報処理組織を使用し、情報処理センターを経由して当該産業廃棄物の運搬又は処分が終了した旨を報告することを求め、かつ、環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物を引き渡した後環境省令で定める期間内に、電子情報処理組織を使用して、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を情報処理センターに登録しなければならない。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)

(電子情報処理組織を使用してその運搬又は処分の状況を速やかに把握する必要のある産業廃棄物)
第8条の31の2
 法第12条の5第1項の環境省令で定める産業廃棄物は、法第2条第5項に規定する特別管理産業廃棄物(令第2条の4第5号イからハまでに掲げるものを除く。)とする。

(電子情報処理組織使用義務者)
第8条の31の3
 法第12条の5第1項の環境省令で定める事業者は、当該年度の前々年度において産業廃棄物の発生量が50トン以上である事業場を設置している事業者(当該事業場から生ずる産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合に限る。)とする。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和四十六年厚生省令第三十五号)

冒頭にある「法12条の3第1項に規定する事業者」とは、「産業廃棄物管理票を交付する事業者」のことですので、ほとんどの排出事業者が該当すると思います。
いつもどおり環境省令に詳細を委ねられたり、限定条件が入っているので読みにくいですが、条文中の①と②が重要なポイントです。

①特別管理産業廃棄物の処理を他人に委託している事業者
②前々年度において特別管理産業廃棄物の発生量が50t以上の事業者

以上の事業者は、「電子情報処理組織使用義務者」要するに電子マニフェストの使用義務者になるわけです。

ただし、特別管理産業廃棄物の中でも除外されている廃棄物があります。それは、規則第8条の31の2の条文にある「令第2条の4第5号イからハまでに掲げるもの」です。
具体的に廃棄物の名称を記載すると、「特定有害産業廃棄物」「ポリ塩化ビフェニル(PCB)」です。

言葉だけではなかなか伝わりにくいと思いますので、環境省のパンフレットから抜粋して図示すると以下のようになります。

出典 環境省

特別管理産業廃棄物を50t以上排出する事業者は、正解にも記載しているように「多量排出事業者」にも該当し、都道府県への報告義務が発生します。(法第12条第9項)
多量排出事業者の義務については、別の機会に説明することにします。

なお、産業廃棄物を1,000t以上排出する事業者も「多量排出事業者」に該当しますが、電子マニフェストは義務化されていません。
私の記憶では、電子マニフェストの義務化が議論された際、「多量排出事業者」を対象にするということで、まずは生活環境上の支障を生じやすい特別管理産業廃棄物が義務となり、その後、産業廃棄物まで対象になるという認識でしたが、いまだ産業廃棄物については義務化されていません。

今後、大規模な不適正処理や不法投棄などの社会問題が発生した際には改めて議論がなされ、産業廃棄物の多量排出事業者についても電子マニフェスト義務化の議論が進むことでしょう。