有償で売却できていれば、廃棄物処理法上の「廃棄物」には当たらない?
橋本啓太
この記事の執筆者
橋本啓太
行政書士 / 廃棄物実務・運用アドバイザー
「廃棄物実務クエスト」共同執筆者
Q:有償で売却できていれば、廃棄物処理法上の「廃棄物」には当たらない?

A:売却できていても、廃棄物に該当する可能性がある。
疑問

売れたってことは価値があるから廃棄物ではないんじゃないの?

今回のクイズは廃棄物処理法における「廃棄物」の定義について出題しました。廃棄物に該当するかどうかは、廃棄物処理法の規制対象となるかを判断する上で重要です。

「お金をもらって引き取ってもらっているのだから、これは有価物であって廃棄物ではない」と取引価値の有無だけで廃棄物の該当性を判断することは非常に危険です。「1円でも値段が付いていれば廃棄物ではない」と考えてしまうと、廃棄物処理法の規制を免れることにつながりかねません。

ただ、廃棄物処理法上の「廃棄物」に該当するかは、金銭的な価値で決まる仕組みにはなっていません。今回も条文と過去の通知や判例から廃棄物処理法における「廃棄物」に定義を解説します。

「廃棄物」と「有価物」の定義は

まず、廃棄物処理法における定義条文を確認します。

(定義)
廃棄物処理法第2条
1 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。

「廃棄物とは」に続き代表的な廃棄物となるものが列挙されていますが、ポイントは「不要物」という言葉です。条文はここで止まっていて、「不要物」が何を指すのかは法律にも政令にも書かれていません。有償か無償かという基準も、金額の多寡も、条文には一切登場しません。また、定義の条文には有価物の定義はなく、廃棄物の定義のみになります。

つまり「有償で売れているから廃棄物ではない」という結論は、条文から直接は導けない、ということになります。では、廃棄物はどのように判断すればいいのでしょうか。

最高裁が示した「不要物」の判断(おから事件)

廃棄物の定義を知るうえで特に重要な裁判所の判例が、「おから事件」(最高裁第二小法廷 平成11年3月10日決定)です。豆腐製造業者から処理料金を受け取っておからを収集・運搬・処分していた業者が、無許可営業に問われた事案でした。

最高裁は「不要物」について、自ら利用することも他人に有償で譲渡することもできないために事業者にとって不要になった物をいう、としたうえで、その該当性は次の要素を総合的に勘案して決めるのが相当だと述べました。

・その物の性状
・排出の状況
・通常の取扱い形態
・取引価値の有無
・占有者の意思

この考え方が、実務で「総合判断説」と呼ばれているものです。注目していただきたいのは、取引価値(=金銭のやり取り)が、5つある要素のうちの1つでしかない点です。有償譲渡の事実は判断材料として重視されますが、それだけで不要物かどうかの判断ができないようになっています。

なお、おからは食品としての価値がある物ですが、それでも当時の取引実態のもとでは廃棄物に該当すると判断されました。「社会的に有用かどうか」と「廃棄物処理法上の廃棄物かどうか」は、別の話だということです。

環境省「行政処分の指針」が示す5つの要素

行政が廃棄物の判断する上で基準としているのは、環境省通知の「行政処分の指針について」(令和3年4月14日 環循規発第2104141号)です。同通知の第1の4(2)では、判例で指摘している5つの要素をほぼそのまま取り込んだうえで、各要素の中身を具体化しています。実務で使う際は、次のようなイメージで押さえておくと整理しやすいと思います。

① 物の性状

その用途に求められる品質を満たしていて、飛散・流出・悪臭など、生活環境保全上の支障が生じるおそれがないか。汚れや異物混入がひどい物、雨ざらしで劣化している物は、この時点で厳しく見られます。

② 排出の状況

需要に沿った計画的な排出になっているか。排出前・排出時に適切な保管や品質管理がなされているか。「売れる予定なのに、なぜか敷地の隅に何年も積み上がっている」という状態は、ここで引っかかります。

③ 通常の取扱い形態

その物に製品としての市場が形成されていて、世の中で廃棄物として処理されている事例が通常は見られないか。同じ物が他社では処理料金を払って処分されている、という実態があると不利に働きます。

④ 取引価値の有無

有償譲渡が実際に行われていて、客観的に見てその取引に経済的合理性があるか。ここで見られるのは「契約書に金額が書いてあるか」ではなく、実際に金銭のやり取りが生じており、その取引が経済合理的に説明できるかどうかです。

⑤ 占有者の意思

占有者に、適切に利用・売却する意思が客観的に認められるか。指針では、単に「有価物だと考えている」という主観の主張だけでは足りず、他の要素に照らして客観的に判断すべきとされています。

5つの要素のうち、どれか一つだけをもって廃棄物と判断するものではありません。あくまでも5つの要素を総合的に勘案して廃棄物該当性を考える必要があるということです。

運搬費が売却代金を上回る場合(いわゆる逆有償)

実務でいちばん判断に迷うのが、「売れてはいるが、運搬費を差し引くと持ち出しになる」ケースです。

この点については、環境省の規制改革通知のQ&A(平成25年追加分)に環境省の回答があります。そこでは、「運送費が売却代金を上回ることのみをもって直ちに経済的合理性がないと判断するものではなく、行政処分の指針に従って判断する必要がある。」という趣旨が示されています。

「逆有償=即アウト」でも「有償=即セーフ」でもなく、5つの要素を総合的に判断した上で廃棄物該当性を判断する必要があるということです。

「専ら物」を逆有償で委託する場合の契約書の要否については、こちらの記事で扱っていますので、あわせてご覧ください。

元行政担当者から見た、有価物主張の落とし穴

元廃棄物部局の担当者としてお伝えすると、廃棄物該当性の判断は法の適用可否に関わるため、行政側も非常に慎重に判断します。行政が「これは本当に有価物か」と疑いを持つきっかけは、実は金額そのものではないことが多いです。

不法投棄や不適正処理の多くは、有価物と称するものが不適正に保管され、積みあがることに原因があります。有価物だと説明されている物が、屋外に長期間・大量に積み上がっている。分別されていない。雨で劣化している。こうなると、まず②排出の状況と①物の性状が疑われ、そこから他の要素も一つひとつ確認される流れになります。売買契約書を示されても、目の前の山と説明が噛み合わなければ、書面だけで納得されることはありません。

逆に言えば、有価物として整理したいのであれば、次のような記録を平時から残しておくことが実務的な備えになります。

  • 売買契約書と、実際の入金が確認できる資料(請求書・通帳等)
  • 計量記録や出荷記録(いつ、どれだけ動いているか)
  • 保管量と売却状況が分かる資料(滞留していないことの裏づけ)
  • 受入先が実際にどう利用しているかが分かる資料
  • 同種の物に市場があることを示す資料

「有価物です」という主張は、主観的な判断ではなく客観的な資料で説明する必要があります。自社で有価物として扱っている物について、一度この観点で棚卸ししてみることをおすすめします。

まとめ

  • 廃棄物処理法第2条第1項の「不要物」に金額基準はない
  • おから事件で、性状・排出状況・取扱い形態・取引価値・占有者の意思の総合判断という枠組みが示された
  • 環境省「行政処分の指針」も同じ5要素を採用しており、有償譲渡はそのうちの1要素にすぎない
  • 運搬費が売却代金を上回っても直ちに廃棄物と決まるわけではないが、行為ごと・着手時点で判断される
  • 有価物とするなら、客観的に資料で説明できる状態にしておくことが備えになる

廃棄物該当性の判断は、同じ品目でも取引実態によって結論が変わり得る、個別性の高い論点です。判断に迷う物をお持ちの場合は、管轄の自治体または専門家にご相談ください。

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橋本啓太
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橋本啓太

行政書士 / 廃棄物実務・運用アドバイザー

マニフェスト、委託契約、現場運用、社内実務フローなどを中心に、実務に落とし込む視点から論点を整理しています。

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