危険廃棄物書類に悩む作業員
橋本啓太
この記事の執筆者
橋本啓太
行政書士 / 廃棄物実務・運用アドバイザー
「廃棄物実務クエスト」共同執筆者
Q:特別管理産業廃棄物を排出する事業者は、処理を委託しているだけでも帳簿を備える必要がある?

A:特別管理産業廃棄物を委託している事業者は、帳簿を備える必要がない。
疑問

帳簿って全事業者が必須じゃないの?

「帳簿」と聞くと、廃棄物を排出する事業者もしっかり備え付けておかないといけないと思われる方もおられるかもしれません。廃棄物処理法において、帳簿の作成・備え付けが必要な事業者は条文で規定されています。

特別管理産業廃棄物を排出する事業者は、条文上は帳簿の作成・備え付けの義務があります。
ただし、運搬も処分もすべて許可業者に委託している場合、帳簿を作成・備え付ける必要はありません。よって、帳簿作成が必要なのは自社で運搬・処分をしている事業者ということになります。

それでは、今回も根拠条文や通知を基に確認していきましょう。

特別管理産業廃棄物の帳簿備え付けの条文

根拠条文を確認

特別管理産業廃棄物の排出事業者の帳簿義務は、以下条文に定めがあります。

(事業者の特別管理産業廃棄物に係る処理)
廃棄物処理法第12条の2
14 第7条第15項及び第16項の規定は、その事業活動に伴い特別管理産業廃棄物を生ずる事業者について準用する。この場合において、同条第15項中「一般廃棄物の」とあるのは、「その特別管理産業廃棄物の」と読み替えるものとする。

(一般廃棄物処理業)
第7条
15 一般廃棄物収集運搬業者及び一般廃棄物処分業者は、帳簿を備え、一般廃棄物の処理について環境省令で定める事項を記載しなければならない。

条文のポイントは「その事業活動に伴い特別管理産業廃棄物を生ずる事業者」と、全ての特別管理産業廃棄物を排出する事業者を対象としているところです。

それに対して産業廃棄物では、帳簿が必要な排出事業者は以下事業者に限定されています。

  • 産業廃棄物処理施設や焼却施設を設置している事業場をもつ事業者
  • 事業場の外で、自ら産業廃棄物の処分・再生を行う事業者

記載事項は「運搬」と「処分」だけ

特別管理産業廃棄物を排出する事業者が作成する帳簿に何を記載しないといけないかについては、施行規則8条の18が定めています。それを以下表にまとめます。

区分記載事項
運搬1 当該特別管理産業廃棄物を生じた事業場の名称及び所在地
2 運搬年月日
3 運搬方法及び運搬先ごとの運搬量
4 積替え又は保管を行つた場合には、積替え又は保管の場所ごとの搬出量
処分1 当該特別管理産業廃棄物の処分を行つた事業場の名称及び所在地
2 処分年月日
3 処分方法ごとの処分量
4 処分(埋立処分を除く。)後の廃棄物の持出先ごとの持出量

この表を見て、記載する必要がない項目が「委託」している場合です。

よって、帳簿を作成して備え付けないといけないのは自社で特別管理産業廃棄物を運搬もしくは処分する事業者のみということがわかります。

「委託」の記載事項がなくなった理由

以前は、特別管理産業廃棄物を委託した場合の事項も帳簿に書くことになっていました。

平成22年の法改正(平成23年4月施行)で、この扱いが見直されています。
環境省の施行通知(平成23年2月4日 環廃対発第110204005号・環廃産発第110204002号)は、理由を次のように説明しています。

2 帳簿記載事項
帳簿対象事業者が拡大されたことに伴い、新たに帳簿の対象となる事業者について帳簿記載事項を定めたこと。また、これまで、帳簿記載事項と管理票制度における記載事項に重複があったことから、運搬又は処分を委託した場合には当該委託に係る事項は記載を不要としたこと。

つまり、委託した分の記録は管理票(マニフェスト)に託されたと理解するとわかりやすいでしょう。

帳簿が必要になる3つのパターン

特別管理産業廃棄物を排出事業者で帳簿が必要となる場合を以下のとおり、まとめます。

  1. 自社の車で運搬した
  2. 事業場内で自ら処理した
  3. 事業場外の自社施設で処分した

産業廃棄物では、自社で運搬するだけ(処分は委託)なら帳簿の対象にはなりません。
特別管理産業廃棄物では、運搬だけでも記載義務が生じます。産業廃棄物と同じ感覚で考えていると帳簿の備え付けの義務を怠る可能性がでてきます。

帳簿の備付けと保存期間について

帳簿の備付けと保管期間に関して、条文で定めれています。

(特別管理産業廃棄物を生ずる事業者の帳簿記載事項等)
第8条の18
2 第2条の5第2項の規定は、前項の帳簿について準用する。
3 第2条の5第3項の規定は、法第12条の2第14項において準用する法第7条第16項の規定による事業者の帳簿の保存について準用する。

(一般廃棄物収集運搬業者及び一般廃棄物処分業者の帳簿記載事項等)
第2条の5
2 前項の帳簿は、事業場ごとに備え、毎月末までに、前月中における前項に規定する事項について、記載を終了していなければならない。

(一般廃棄物収集運搬業者及び一般廃棄物処分業者の帳簿記載事項等)
第2条の5
3 法第7条第16項の規定による一般廃棄物収集運搬業者及び一般廃棄物処分業者の帳簿の保存は、次によるものとする。
一 帳簿は、1年ごとに閉鎖すること。
二 帳簿は、閉鎖後5年間事業場ごとに保存すること。

以上の条文をまとめると以下のとおりです。

  • 備付け :事業場ごとに備える
  • 記載期限:毎月末までに、前月分を記載
  • 保 存 :1年ごとに閉鎖し、閉鎖後5年間保存

帳簿の様式は法律上定められていませんので、必要事項をまとめた様式を作成して保存する必要があります。

まとめ

特別管理産業廃棄物の排出事業者のうち、自社で当該廃棄物を運搬・処分する事業者は帳簿の作成・備え付けの義務があります。全部を委託している場合は記載すべき事項がなく、記録はマニフェストで管理します。自社での運搬や処理が少しでもあれば、その分は帳簿に記載が必要です。

橋本啓太
この記事の著者

橋本啓太

行政書士 / 廃棄物実務・運用アドバイザー

マニフェスト、委託契約、現場運用、社内実務フローなどを中心に、実務に落とし込む視点から論点を整理しています。

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