大量の契約書のイメージ
Q:産業廃棄物を委託する収集運搬業者、処分業者が同一の業者の場合でも産業廃棄物処理委託契約書を収集運搬用と処分用の2枚作成する必要がある。

A:✕ 法定記載事項が全て満たされていれば契約書は1枚でもよい。
疑問

たしか、以前のクイズで「委託契約書は法律の趣旨に基づき、2者で契約することが望ましい」と解説があったけど契約書は1枚でいいの?

産業廃棄物処理委託契約書(以下、「委託契約書」とする。)の3者契約については、
2024年9月19日付「産業廃棄物委託契約書は、収集運搬業者、処分業者が異なる場合でも合意がとれていれば、3者契約が可能との規定はある?
で解説したところです。

この記事のおさらいになりますが、委託契約書を作成する場合、3者が1枚の契約書を作成することは望ましくありません。その理由は以下条文にあります。

(事業者の処理)
第12条 

5 事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)

この条文では、「収集運搬業の許可」、「処分業の許可」を取得した事業者にそれぞれ委託する必要があるので、以下の図に示すとおり、例えば【収集運搬業の許可のみ】、【処分業の許可のみ】を持った事業者とは、当たり前のことですが「収集運搬」もしくは「処分」の委託しかできません。

よって、排出事業者と収集運搬業、排出事業者と処分業者の【2者間】によって契約することが原則となり、それぞれの許可のみしか持たない事業者と委託契約を結ぶ場合は、それぞれと委託契約書を締結する必要があるため、2枚の契約書を作成することが望ましいと考えます。

二者契約のイラスト

それでは、今回のクイズにもあるとおり「収集運搬業の許可」、「処分業の許可」をどちらも取得している業者である場合は、どうでしょうか。
「収集運搬業」「処分業」の両方の許可を取得しているので、もちろん委託契約も「収集運搬業」「処分業」の両方を締結することができます。

それでは、委託契約書はどうかというと、先ほどの条文では「それぞれ委託しなければならない。」とありますが、委託契約書をそれぞれと締結する義務までは記載がありません。
よって、排出事業者と両方の許可を取得した事業者の間では委託契約書を1枚にまとめることができます。もちろん許可ごとに分けて2枚作成することを拒むものではありません。

ただし、1枚で「収集運搬業」「処分業(中間処理もしくは最終処分)」両方の委託契約書を作成する場合、法定記載事項に注意する必要があります。

委託契約書の法定記載事項はこれまでの以下記事でも説明しておりますが、

2024年6月14日付「産業廃棄物処理委託契約書には、委託先業者が加入する保険の内容を記載しなければならない?
2024年10月18日付「建設廃棄物の場合、工事現場ごとに産業廃棄物処理委託契約書を作成しなければならない?

改めて廃棄物処理法で定められている、法定記載事項は下記のとおりです。

「収集運搬業」「処分業」の両方を取得している事業者の場合、委託契約書を1枚とすることができますが、法定記載事項には十分に注意しましょう。