| Q:飲食店から出た調理くずや食べ残しを他人に委託して処理する場合、廃棄物処理法により、書面による委託契約書の作成が義務づけられている? A:飲食店から出た調理くず等は一般廃棄物に該当し、廃棄物処理法では一般廃棄物について委託契約書の作成は義務付けられていない。 |
廃棄物を処理する際は、必ず委託契約書が必要だと思っていたのに、、、廃棄物によってはいらないの?
今回のクイズは、前段の部分で「廃棄物の分類」を後段の部分で「委託契約書」に関して問う内容でした。
産業廃棄物のを取り扱う事業者ほど、「廃棄物の処理を他人に委託するなら契約書は必須」と考えるのではないでしょうか。実際、産業廃棄物を処理する際には、その認識は正しいです。
しかし、今回は契約書の要否の前に、クイズ前段の廃棄物の分類を検討する必要があります。それは「そもそも、その廃棄物は産業廃棄物なのか」という点です。今回も条文を基に確認していきましょう
まず確認するのは「その廃棄物は産業廃棄物か」
産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、法律と政令で定められたものをいいます。ここでよくある誤解が、「事業活動から出た廃棄物=産業廃棄物」という認識です。
実際には、産業廃棄物は限定列挙です。列挙されたものに当たらなければ、事業活動から生じた廃棄物であっても「一般廃棄物」として扱われます。
さらにやっかいなのが、産業廃棄物として列挙された品目のうち一部には「業種限定」が付いていることです。同じ見た目の廃棄物であっても、どの業種から出たかによって産業廃棄物になったり、一般廃棄物になったりします。
「動植物性残さ」には業種の限定がある
調理くずや食べ残しと聞いて、産業廃棄物20種類のうち「動植物性残さ」を思い浮かべた方は多いと思います。ところが、この品目は次のように定義されています。
(産業廃棄物)
廃棄物処理法施行令第2条
法第2条第4項第1号の政令で定める廃棄物は、次のとおりとする。
(中略)
四 食料品製造業、医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物
(以下略)
対象となる業種は、食料品製造業・医薬品製造業・香料製造業の3つに限られています。飲食店(飲食サービス業)はここに含まれていません。したがって、飲食店の厨房から出る調理くずや客の食べ残しは、一般的には産業廃棄物ではなく事業活動から生じた一般廃棄物と整理されます。
ただし、セントラルキッチンで大量に食品を製造し他店舗に供給しているようなケースでは、その工程が食料品製造業に該当するため、セントラルキッチンから排出される動植物性残さは産業廃棄物に該当します。
同じ厨房から出ても産業廃棄物になるもの
ここが実務上いちばん見落とされるところです。調理くずが一般廃棄物だからといって、その店から出る廃棄物がすべて一般廃棄物になるわけではありません。
| 飲食店から出るもの | 区分 | 備考 |
|---|---|---|
| 調理くず、食べ残し | 事業系一般廃棄物 | 動植物性残さの業種限定に当たらない |
| 紙ナプキン、伝票などの紙くず | 事業系一般廃棄物 | 紙くずにも業種限定がある |
| 使用済みの食用油(廃食用油) | 産業廃棄物(廃油) | 業種限定なし。有償で売却できている場合は廃棄物に当たらないと整理される余地がある |
| ラップ、食品トレー、ペットボトル | 産業廃棄物(廃プラスチック類) | 業種限定なし |
| 空き缶、調理器具の金属片 | 産業廃棄物(金属くず) | 業種限定なし |
| 空きびん、割れた食器 | 産業廃棄物(ガラスくず等) | 業種限定なし |
つまり、ひとつの厨房から、一般廃棄物と産業廃棄物が同時に発生しているのがわかります。そして、産業廃棄物については、当然ながら書面による委託契約が必要になります。
一般廃棄物の委託基準に、書面契約は含まれていない
では、事業系一般廃棄物のほうはどうなっているのでしょうか。条文の構造を産業廃棄物と並べてみると、違いがはっきりします。
| 産業廃棄物 | 一般廃棄物 | |
|---|---|---|
| 委託の根拠 | 法第12条第5項・第6項 | 法第6条の2第6項・第7項 |
| 委託基準を定める政令 | 令第6条の2 | 令第4条の4 |
| 書面による契約 | 義務(令第6条の2第4号) | 廃棄物処理法上の定めなし |
| 法定記載事項 | あり(規則第8条の4の2) | 廃棄物処理法上の定めなし |
| 契約書の保存義務 | あり(契約終了日から5年間) | 廃棄物処理法上の定めなし |
事業者が一般廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合の基準は、以下条文に規定されています。
(事業者の一般廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)
廃棄物処理法施行令第4条の4
法第6条の2第7項の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 他人の一般廃棄物の運搬又は処分若しくは再生を業として行うことができる者であつて、委託しようとする一般廃棄物の運搬又は処分若しくは再生がその事業の範囲に含まれるものに委託すること。
二 特別管理一般廃棄物の運搬又は処分若しくは再生にあつては、その運搬又は処分若しくは再生を委託しようとする者に対し、あらかじめ、当該委託しようとする特別管理一般廃棄物の種類、数量、性状その他の環境省令で定める事項を文書で通知すること。
条文の内容から、委託しようとする一般廃棄物の運搬や処分がその事業の範囲に含まれる者に委託すること、といった委託先に関する基準はありますが、産業廃棄物の令第6条の2第4号のような「書面により行い、次に掲げる事項を含めること」という規定は置かれていません。
したがって、クイズの答えは「×」となります。廃棄物処理法が書面契約を義務づけているのは産業廃棄物についてであり、一般廃棄物については同じ義務が課されていません。
ただし、「一般廃棄物なら書面は一切いらない」と覚えてしまうのは危険です。先ほどの条文の第2号は、特別管理一般廃棄物の運搬や処分を委託する場合について、あらかじめその種類・数量・性状などを文書で通知することを求めています。感染性一般廃棄物などを扱う事業場では、契約書とは別に書面が必要になる場面があるということです。
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元審査官の視点:契約書の有無より「契約書に載っていない廃棄物」を見る
審査や立入検査をする側から見ると、飲食店のような小規模な排出事業場で気になるのは、契約書が1枚もないことではありません。契約書はあるのに、そこに書かれていない廃棄物が同じ便で運び出されていないか、という点です。
よくあるのは、次のような流れです。開店にあたって、地元の収集業者と「厨芥類」の回収について取り決めをした。その業者は一般廃棄物の許可を持っている。ここまでは何の問題もありません。ところが実際のごみ置き場には、廃食用油の一斗缶や、たれの入っていたプラスチック容器、空き缶がまとめて置かれている。そしてそれも同じ便で持っていってもらっている。
検査でここを見ています
・ごみ置き場に実際に置かれている物と、契約書・伝票に書かれている品目が一致しているか
・産業廃棄物に当たる品目について、産業廃棄物処理業の許可を持つ業者との契約書とマニフェストがあるか
・「一般廃棄物」の名目で、産業廃棄物が一緒に運び出されていないか
一般廃棄物に契約書がないこと自体は、廃棄物処理法違反ではありません。しかし、産業廃棄物を一般廃棄物の便に混ぜて、産業廃棄物処理業の許可を持たない業者に運ばせていれば、それは委託基準違反として罰則の対象になり得ます。区分を取り違えた結果、契約書がないことよりはるかに重い問題に発展してしまうわけです。
「一般廃棄物の契約書は要らない」という知識だけが先に入ってしまうと、この危うさに気づけません。要らないのは書面であって、「排出事業者としての責任が軽くなるわけではない」と考えておくのが安全です。
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廃棄物処理法で不要でも、条例や要綱で求められることがある
もうひとつ押さえておきたいのが、各自治体のルールです。一般廃棄物の処理は市町村の責任で行われるため、市町村は条例や要綱で独自の取り扱いを定めることができます。事業系一般廃棄物について、許可業者との書面契約を求めたり、排出事業者に一定の届出や搬入時の基準を課したりしている可能性があります。
つまり、「廃棄物処理法上は不要」という結論と、「自分の店では契約書を作らなくてよい」という結論は、必ずしも一致しません。実際にどう対応するかを決める前に、事業場の所在地の市町村がどのようなルールを定めているかを確認しておくことをおすすめします。
また、法律や条例の要否とは別に、料金や回収頻度、トラブル時の責任分担をはっきりさせておくという意味では、処理に関する書面を交わしておく実益は十分にあります。
まとめ
- 飲食店の調理くず・食べ残しは、動植物性残さの業種限定(食料品製造業・医薬品製造業・香料製造業)に当たらないため、一般的には「一般廃棄物」として扱われる。
- 一般廃棄物の委託基準(法第6条の2第6項・第7項、令第4条の4)には、産業廃棄物のような書面契約や法定記載事項の定めがない。
- 一般廃棄物の委託先は原則として市町村の許可を受けた業者に限られ、誰に頼んでもよいわけではない。
- 同じ厨房から出る廃食用油・廃プラスチック類・金属くずなどは業種限定のない産業廃棄物であり、こちらには書面による委託契約書とマニフェストが必要になる。
- 市町村の条例や要綱で契約書の作成等が求められている場合があるため、所在地のルールは別途確認する。
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