| Q:産業廃棄物処理施設の設置許可は、他人に譲り渡すことができる? A:施設の許可は譲り渡すことができる。 |
以前のクイズで許可は他人に譲れないって学んだと思うんだけど?
以前、業許可に関してクイズを出題しましたが、たしかに業許可は他人に譲ることができません。これは、産業廃棄物処分業や産業廃棄物収集運搬業などのいわゆる営業許可は、「会社の能力に対して与えられるもの」であるため、承継はできないことを解説しました。
【関連記事】2026年4月17日付 「産業廃棄物処分業の許可は、他人に譲渡したり、承継したりすることができる?」
しかし、同じ「許可」でも、産業廃棄物処理施設の設置許可は、他人に譲渡ができます。今回も条文からこの違いを説明します。
「業の許可」と「施設の設置許可」は別物
まず押さえておきたいのが、産業廃棄物処分業などの「業許可」と産業廃棄物処理施設などの「施設許可」の違いです。産業廃棄物処分業の許可は、以下条文に規定されています。
(産業廃棄物処理業)
廃棄物処理法第14条第6項
産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を処分する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
産業廃棄物処分業の許可は、いわゆる「営業許可」の性質をもっていて、その者が他人の廃棄物を扱うにふさわしいかどうかを審査して与えられるものです。申請人に対して許可が与えられるため、法律上、地位の承継に関する規定が置かれていません。したがって、事業譲渡でも合併でも分割でも、引き継ぐ側は原則として新規に許可を取り直すことになります。
一方、産業廃棄物処理施設の設置許可(法第15条)は、以下の条文に規定されています。
(産業廃棄物処理施設)
廃棄物処理法第15条第1項
産業廃棄物処理施設(廃プラスチック類処理施設、産業廃棄物の最終処分場その他の産業廃棄物の処理施設で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は、当該産業廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。
産業廃棄物処理施設の許可は、その施設の構造と維持管理計画が基準に適合しているかを審査するものです。施設の許可は、営業許可と異なり、施設に対して与えられます。よって、扱う者が変わっても許可が継続するという性質を持っています。
そのため、施設許可は他人に譲り渡したり、借り受けたいりする規定が用意されています。
施設許可の譲り受け、借り受けとは
それでは、施設許可の譲り受け等の制度は条文のどこに規定されているのか確認してみます。
(準用)
廃棄物処理法第15条の4
第9条の4の規定は産業廃棄物処理施設の設置者について、第9条の5から第9条の7までの規定は産業廃棄物処理施設について準用する。この場合において、第9条の4中「一般廃棄物処理施設」とあるのは「産業廃棄物処理施設」と、第9条の5第1項中「第8条第1項」とあるのは「第15条第1項」と、同条第2項及び第9条の6第2項中「第8条の2第1項」とあるのは「第15条の2第1項」と読み替えるものとする。
(一般廃棄物処理施設の譲受け等)
廃棄物処理法第9条の5
第8条第1項の許可を受けた者から当該許可に係る一般廃棄物処理施設を譲り受け、又は借り受けようとする者は、環境省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 第8条の2第1項(第3号及び第4号に係る部分に限る。)の規定は、前項の許可について準用する。
3 第1項の許可を受けて一般廃棄物処理施設を譲り受け、又は借り受けた者は、当該一般廃棄物処理施設に係る許可施設設置者の地位を承継する。
産業廃棄物処理施設に関しては、準用条文となっており、元の条文は一般廃棄物処理施設の譲受け等に規定されています。都道府県知事の許可を得ることで、法第9条の5第1項で施設の許可を譲り受け等ができることが分かり、同条第3項で施設許可の地位が申請者に承継されることがわかります。
(合併及び分割)
廃棄物処理法第9条の6
許可施設設置者又は第9条の3の3第1項の規定による届出をした者である法人の合併の場合(許可施設設置者等である法人と許可施設設置者等でない法人が合併する場合において、許可施設設置者等である法人が存続するときを除く。)又は分割の場合において当該合併又は分割について都道府県知事の認可を受けたときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該一般廃棄物処理施設を承継した法人は、許可施設設置者等の地位を承継する。
2 第8条の2第1項(第3号及び第4号に係る部分に限る。)の規定は、前項の認可について準用する。(相続)
廃棄物処理法第9条の7
許可施設設置者等について相続があつたときは、相続人は、許可施設設置者等の地位を承継する。
2 前項の規定により許可施設設置者等の地位を承継した相続人は、相続の日から30日以内に、環境省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
承継の手続は3パターンに分かれる
先ほど示した設置許可を引き継ぐ場面を次の3つに整理しました。手続によって「許可」「認可」「届出」になっている点に注意してください。
| 場面 | 手続 | タイミング | 根拠(法第15条の4による準用) |
|---|---|---|---|
| 譲り渡け・借り受け | 譲受け・借受けの許可 | あらかじめ | 法第9条の5 |
| 合併・分割 | 認可 | あらかじめ | 法第9条の6 |
| 相続 | 届出 | 相続の日から30日以内 | 法第9条の7 |
①譲り受け・借り受けは、事前の「許可」
施設を譲り受けよう、あるいは借り受けようとする者は、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければなりません。この許可を受けた者は、その施設に係る許可施設設置者の地位を承継することになります。
つまり「施設を買ったので設置許可を一から取り直す」のではなく、既存の設置許可がそのまま移転するということになります。新規設置許可で求められる生活環境影響調査書の作成や施設によって求められる縦覧などの重い手続を経ずに許可を取得できるメリットがあります。
②合併・分割は「認可」
法人の合併、または施設を承継させる会社分割の場合は、都道府県知事の認可を受けたときに地位が承継されます。認可を受けていなければ承継の効力は生じませんので、組織再編のスケジュールを組む際は、合併や分割の予定日から逆算した手続の準備が必要になります。
③相続は「届出」
個人で施設を設置していた方が亡くなった場合、相続人は設置者の地位を承継します。ここは事前の許可ではなく、相続の日から30日以内の届出とされています。
業の許可であれば相続でも承継できませんので、相続するものは業許可を新たに取得しないと他人の廃棄物を処理することはできません。
環境省通知から読み解く注意点
譲受け等の許可については、環境省通知(令和2年3月30日付け 環循規発第2003301号)の第4に、審査側の運用が具体的に示されています。条文を読むだけでは気づきにくく、実務で問題になりやすい点を3つあげます。
建設に着手していない施設は、譲り受けられない
設置許可は下りているものの、施設の建設に着手していない段階(基礎部分のみの工事を除く)のものについては、譲受け等の許可をしてはならないとされています。理由は、譲受けの対象となる施設がまだ存在しないからです。
裏を返せば、設置許可だけを取得しておいて権利として他社に流す、といった使い方は制度上できない建て付けになっている、ということです。
譲り渡す側の欠格要件も審査に影響する
譲り渡す者・貸し与える者が欠格要件に該当している場合も、譲受け等の許可はできないとされています。その者に対しては、許可を出す前の段階で取消処分を行わなければならないためです。
譲り受ける側から見れば、自社の適格性が整っていても、相手方の事情で手続が止まる可能性があるということになります。取引に入る前に、相手方の行政処分歴や役員の状況を確認しておく必要があります。
借りた施設を「返す」ときにも許可が必要
見落とされやすいのがこの点です。施設を借り受けていた者が、貸し渡した者に施設を返還する場合であっても、当初貸し渡した者が施設を稼働させるのであれば、あらかじめ譲受け等の許可が必要とされています。
「元の持ち主に返すだけだから手続はいらないだろう」と考えてしまいがちですが、設置者の地位が動く以上、同様の手続きが借り受けた側にも必要となります。賃貸借の終了時期が決まっている場合は、そこから逆算した準備が必要となります。
施設を引き継いでも「業の許可」は付いてこない
承継されるのは、あくまで産業廃棄物処理施設の設置者としての地位だけです。
その施設を利用して自社の廃棄物のみを処理する場合は、産業廃棄物処分業の許可は不要ですが、他人の産業廃棄物を受け入れて処理するためには産業廃棄物処分業の許可が必要となります。施設の承継を受けたとしても、産業廃棄物処分業の許可はになりません。譲り受けた側が自ら新規に取得する必要があります。
設置許可の譲受けだけを済ませて操業を再開してしまえば、無許可営業として厳しい責任を問われることになります。事業譲渡やM&Aの場面では、設置許可の譲受け手続と処分業の新規許可申請を並行して段取りしておく必要があります。
まとめ
- 産業廃棄物処理施設の設置許可は、事前に譲受け・借受けの許可を受ければ、他人に譲り渡すことができる。
- 合併・分割は認可、相続は30日以内の届出と、場面ごとに手続が異なる。
- 建設未着手の施設は対象外。相手方の欠格要件も影響する。借りた施設の返還時にも許可が要る。
- 設置許可を承継しても、産業廃棄物処分業の許可は承継されない。
産業廃棄物処理業者の事業を承継する場合は、営業許可と施設許可の制度の違いをよく理解して進める必要があります。
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