
Q:屋内において産業廃棄物の保管をする場合でも、崩落の危険性があることから保管高さの基準は適用される? A:「屋内」において保管する場合、保管高さの基準は適用されない。 |
今回のクイズの正答率は50%でした。廃棄物の保管には、法律によってさまざまな条件がかけられているため間違いやすいポイントとなっています。今回も法律を基に保管基準を読み解いていきましょう。

屋内での保管であれば産業廃棄物をどれだけ積み上げていいものなの!?
正答率が低かった理由としては、「屋内での保管であっても産業廃棄物を積み上げすぎると崩落の危険性があるから高さ基準がもうけられているだろう」と思われた方が多かったからではないのでしょうか。
それでは、実際に法律の基準はどうなっているのか確認しましょう。
まずは、保管基準の条文から確認します。
(事業者の処理)
廃棄物処理法第12条
2 事業者は、その産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準(以下「産業廃棄物保管基準」という。)に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければならない。
(以下略)
事業者には、産業廃棄物が運搬されるまでの間、基準に従ってその産業廃棄物を保管する必要があります。その理由は、条文にもあるとおり「生活環境の保全上支障がないようにこれを保管」するためです。
さらに、環境省令には「産業廃棄物保管基準」の詳しい内容が定められていますので、そちらも確認していきましょう。
(産業廃棄物保管基準)
廃棄物処理法施行規則第8条
法第12条第2項の規定による産業廃棄物保管基準は、次のとおりとする。
一 略
二 保管の場所から産業廃棄物が飛散し、流出し、及び地下に浸透し、並びに悪臭が発散しないように次に掲げる措置を講ずること。
イ 産業廃棄物の保管に伴い汚水が生ずるおそれがある場合にあつては、当該汚水による公共の水域及び地下水の汚染を防止するために必要な排水溝その他の設備を設けるとともに、底面を不浸透性の材料で覆うこと。
ロ 屋外において産業廃棄物を容器を用いずに保管する場合にあつては、積み上げられた産業廃棄物の高さが、保管の場所の各部分について次の(1)及び(2)に掲げる場合に応じ、当該(1)及び(2)に定める高さを超えないようにすること。
条文のとおり、産業廃棄物の高さに制限がかかるのは「屋外において」保管する場合に限られます。
よって、「屋内」で産業廃棄物を保管する場合には、積み上げる高さに制限がないことになります。
また、「容器を用いて」保管する場合にも高さ制限がありません。ですので、屋外であってもフレコンバックなどの容器を用いた保管であれば保管高さの制限はありません。
保管高さの制限がある場合を以下のとおりまとめます。
【保管高さの制限が適用される場合】
① 屋外において
② 容器を用いない
高さに制限がないということは、冒頭で疑問としてあげられたように「産業廃棄物が崩落する危険性があるのではないか」と思われるかもしれません。
しかし、廃棄物処理法における趣旨は、あくまで「生活環境の保全上支障がないように」保管することであり、具体的には規則に定められたとおり「保管場所から産業廃棄物が飛散・流出・地下浸透せず、悪臭を発散しないようにすること」が求められています。
したがって、「廃棄物の崩落の危険性があるから高さを制限する」という考え方は、法律上の規定には含まれていません。
なお、産業廃棄物処理業者には、廃棄物の保管量に上限が定められているため、屋内だからといって産業廃棄物を無制限に保管できるわけではありません。
今回のクイズのヒントは、以前出題した産業廃棄物保管場所の掲示板の以下ブログにありました。併せてご確認ください。
2025年1月10日付「産業廃棄物保管場所の掲示板には保管高さを必ず記載する必要がある?」
2025年4月11日付「屋内で産業廃棄物を保管する場合でも、保管場所を示す掲示板には「保管高さ」の記載が必要である?」