| Q:排出事業者は、マニフェストA票を保存していない場合でも刑事罰の対象にならない? A:A票を保存しなかった場合は、刑事罰の対象となり得ます。 |
たかが紙切れ1枚を紛失しただけで、刑事罰の対象にまでなるの!?
「マニフェストの保存くらいで、まさか刑事罰までは科されないだろう」
このように考えている排出事業者の担当者は、少なくありません。
行政指導くらいの対象にはなっても、刑事罰の対象になるのは不法投棄のような悪質な事案に限られる、という感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、マニフェストA票の保存義務違反は、条文上明確に刑事罰の対象として定められています。
以下、根拠条文を確認しながら解説します。
法的根拠
まず、A票の保存義務そのものを定めた条文を確認します。
廃棄物処理法第12条の3第2項
前項の規定により管理票を交付した者(以下「管理票交付者」という。)は、当該管理票の写しを当該交付をした日から環境省令で定める期間保存しなければならない。
排出事業者は、産業廃棄物の処理を委託する際にマニフェストを交付する立場、すなわち「管理票交付者」に当たります。
このとき排出事業者の手元に残る写しが、いわゆる「A票」です。
保存期間については、次のとおり環境省令で定められています。
廃棄物処理法施行規則第8条の21の2
法第12条の3第2項の環境省令で定める期間は、5年とする。
つまり、A票は交付した日から5年間、排出事業者自身が保存しなければなりません。
そして、この保存義務に違反した場合の罰則が、次の条文です。
廃棄物処理法第27条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する。
一~四 (略)
五 第12条の3第2項、第6項、第9項又は第10項の規定に違反して、管理票又はその写しを保存しなかつた者
したがって、A票を保存していなかった場合、この第27条の2第五号に該当し、排出事業者は「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」という刑事罰の対象となる可能性があります。
さらに、この違反行為が従業員によるものであっても、法人自身も処罰の対象から逃れられません。
廃棄物処理法第32条(両罰規定)
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 (略)
二 第25条第1項(前号の場合を除く。)、第26条、第27条、第27条の2、第28条第二号、第29条又は第30条 各本条の罰金刑
法人の代表者や従業員が、その業務に関してこの違反行為をした場合は、行為者本人が罰せられるだけでなく、法人に対しても同額の罰金刑(100万円以下)が科されます。
つまり、担当者個人だけの問題ではなく、会社も両罰規定による罰金刑の対象となる可能性があるということです。
実務上の考え方
条文上、産業廃棄物管理票の保存義務違反は明確に犯罪として定められています。
委託した産業廃棄物について不適正処理が後から発覚した場合、マニフェストを保存していないと、産業廃棄物をいつ、誰に、どのような内容で引き渡したのかを証明できなくなります。
保存義務違反として刑事罰の対象となり得るだけでなく、行政による事実確認への対応にも支障が生じます。
なお、電子マニフェスト(情報処理センターを介したマニフェスト制度)を利用している場合は、交付・報告のデータが情報処理センターに保存されるため、紙のA票を紛失するという物理的なリスクを構造的に回避できます。
DX推進の観点からも、紙マニフェストから電子マニフェストへの切替えは有効な取組みと言えます。
企業への影響
マニフェストの保存は、地味な事務作業に見えます。
しかし、マニフェストは、委託した産業廃棄物の引渡しから処分終了までの流れを確認するための重要な記録です。
保存を怠ることは、単なる書類管理の不備にとどまりません。
マニフェストの管理に問題がないかを、定期的に確認する必要があります。
まとめ
排出事業者がマニフェストA票を保存していない場合、刑事罰の対象になり得ます。
廃棄物処理法第12条の3第2項に定める保存義務に違反した場合、同法第27条の2第五号により、「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」が科される可能性があります。
使用者である法人も、第32条の両罰規定により同額の罰金刑の対象となる可能性があります。
刑事罰の成否には故意の有無が関わりますが、保存義務違反という法令違反の事実自体は、故意・過失を問わず生じます。
マニフェストの保存管理は、担当者個人の裁量に委ねるのではなく、保存方法や保管期間の管理を含めた、会社としての管理体制を今一度見直しておくことをおすすめします。
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