
Q:産業廃棄物処理委託契約書の保存期間は契約締結日から5年間である? A:産業廃棄物処理委託契約書の保存期間は「契約締結日から」ではなく、「契約終了日から」5年間となります。 |
まずは、廃棄物処理法の条文の確認から始めましょう。
廃棄物処理法第12条及び廃棄物処理法施行令第6条の2では、産業廃棄物処理委託契約書の保存期間を、
廃棄物処理法第12条(事業者の処理)
事業者は、自らその産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。第5項から第7項までを除き、以下この条において同じ。)の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(当該基準において海洋を投入処分の場所とすることができる産業廃棄物を定めた場合における当該産業廃棄物にあつては、その投入の場所及び方法が海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた場合におけるその投入の場所及び方法に関する基準を除く。以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。5 事業者(中間処理業者(発生から最終処分(埋立処分、海洋投入処分(海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた海洋への投入の場所及び方法に関する基準に従つて行う処分をいう。)又は再生をいう。以下同じ。)が終了するまでの一連の処理の行程の中途において産業廃棄物を処分する者をいう。以下同じ。)を含む。次項及び第7項並びに次条第5項から第7項までにおいて同じ。)は、その産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除くものとし、中間処理産業廃棄物(発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程の中途において産業廃棄物を処分した後の産業廃棄物をいう。以下同じ。)を含む。次項及び第7項において同じ。)の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。
6 事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。
廃棄物処理法施行令第六条の二(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)
法第12条第6項の政令で定める基準は、次のとおりとする。一~四 (略)
五 前号に規定する委託契約書及び書面をその契約の終了の日から環境省令で定める期間(廃棄物処理法施行規則第8条の4の3で「5年」と規定)保存すること。
六 (略)
と、「契約終了日から5年間」と定めています。

「契約締結日から5年間」の方が、分かりやすいし効率的なんじゃないの?
保存期間の起算点が「契約締結日」であれば、契約書に記入された契約日がいつかは一目瞭然ですので、管理自体はしやすくなるように見えます。
しかしながら、産業廃棄物処理委託契約書は、排出事業者と産業廃棄物処理業者の取引関係が続く限り、延々と同内容で契約更新を続けることが常ですので、「契約締結日」を起算点とした場合、10年間自動更新を続けている契約書を「契約日から5年経過したので破棄しても良いだろう」というミスが起きる可能性があります。
以上のように、法律上は、「契約終了後5年間の保存義務」が課されていますが、上記の条文規定を知らない人の場合、「取引が終わったので、もう古い契約書はいらない」と破棄、または契約書の管理がおざなりになった結果、そのまま紛失という事態がよく起きます。
こうした法律違反となる事態が起きることを防ぐためには、
- 文書の保存期間を定める社内規程の整備
- 契約終了した産業廃棄物処理委託契約書を電子保存
等の複数の対策を同時に講じていく必要がありますが
一番重要なことは、「産業廃棄物処理委託契約書を契約終了日から5年間保存すること」は、廃棄物処理法で定められた委託者(排出事業者)の義務であることを、実務に関係する人全員が認識していることです。
現在の担当者全員が認識しておくことは当然として、人事異動で新たに事務を引き継ぐ人のためにも、社内で産業廃棄物処理委託契約書に関する必要最低限のマニュアルを整備しておきたいところです。