農家のビニールハウスのフィルムは、個人が発生させた廃棄物なので「一般廃棄物」に該当する?
Q:農家のビニールハウスのフィルムは、個人が発生させた廃棄物なので「一般廃棄物」に該当する?
A:「農業」という「事業活動」の一環で発生した廃棄物であるため、産業廃棄物の「廃プラスチック類」に該当します
疑問

個人事業主に、環境に悪影響を及ぼさないフィルムを産業廃棄物として処理することを求めるのは酷じゃない?

いつもどおりに廃棄物処理法の根拠条文を見ていきましょう。

廃棄物処理法第2条第4項

 この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。
一 事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
二 輸入された廃棄物(以下略)

「農業」も「事業活動」の一環ですので、農業を営む農家が発生させたビニールハウスの廃フィルムは、一般廃棄物ではなく、産業廃棄物の「廃プラスチック類」に該当します。

ちなみに、廃棄物処理法第2条の「事業活動」は、「営利性」が不可欠というわけではなく、「地縁団体」や「学校の部活動」等の「営利を目的としない事業活動」もその範囲に含まれてきます。

また、「理髪店から発生する「人の毛髪」は発生量が多いため、産業廃棄物として処分しなければならない?」で解説したとおり

「発生量の多寡」や「事業主体が個人か法人か」は、「事業活動に該当するかどうか」を判断する際に何の影響も与えません。

「産業廃棄物」のそれぞれの種類は、廃棄物処理法で比較的厳格に定義されていますが、

「産業廃棄物」か否かの判断要素の一つである「事業活動」は、「営利性の有無」や「事業主体が個人か法人か」を考慮する必要は無いとも言えます。

なお、市町村の判断によって、農家が発生させた廃フィルムを、一般廃棄物と合わせてその市町村の一般廃棄物処理施設で処理しているケース(合わせ産業廃棄物処理)がありますが

(事業者及び地方公共団体の処理)
廃棄物処理法第11条 事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。
2 市町村は、単独に又は共同して、一般廃棄物とあわせて処理することができる産業廃棄物その他市町村が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行なうことができる。
3 (略)

それは個別の市町村が、地域の実情に応じて判断した結果であり、その市町村内でしか行えない処理方法です。

その判断の過程や法律上の根拠をすっ飛ばし、「農家の廃フィルムは一般廃棄物である」と性急に結論だけに飛びつくと、廃棄物処理法違反となりますので、ご注意ください。

実務上の注意点としては、
廃プラスチック類を委託する農家には、「産業廃棄物管理票(紙マニフェスト)」や「産業廃棄物処理委託契約書」等の委託基準が課されます。

農家が交付すべき産業廃棄物管理票に関しては、下記の有名な通知があります。

平成23年3月17日付 「環廃産発第110317001号」

産業廃棄物管理票制度の運用について(通知)

 管理票の交付については、例えば農業協同組合、農業用廃プラスチック類の適正な処理の確保を目的とした協議会又は当該協議会を構成する市町村が農業者の排出する廃プラスチック類の集荷場所を提供する場合、ビルの管理者等が当該ビルの賃借人の産業廃棄物の集荷場所を提供する場合、自動車のディーラーが顧客である事業者の排出した使用済自動車の集荷場所を提供する場合のように、産業廃棄物を運搬受託者に引き渡すまでの集荷場所を事業者に提供しているという実態がある場合であって、当該産業廃棄物が適正に回収・処理されるシステムが確立している場合には、事業者の依頼を受けて、当該集荷場所の提供者が自らの名義において管理票の交付等の事務を行っても差し支えないこと。なお、この場合においても、処理責任は個々の事業者にあり、産業廃棄物の処理に係る委託契約は、事業者の名義において別途行わなければならないこと。

「農業協同組合、農業用廃プラスチック類の適正な処理の確保を目的とした協議会又は当該協議会を構成する市町村が農業者の排出する廃プラスチック類の集荷場所を提供する場合」のみ、「集荷場所の提供者が自らの名義において管理票の交付等の事務を行っても差し支えない」とされています。

つまり、JA等が廃フィルムの集荷場所を提供し、そこに組合員である農家に廃フィルムを持ち寄ってもらう場合は、JA等の名義で産業廃棄物管理票を交付して良い、と(通知では)されています。

なお、同通知でも「委託契約は、事業者の名義において別途行わなければならない」とあるように、共同集荷場所に廃フィルムを持ち寄る場合であっても、排出事業者である各農家は、処分業者と個別に産業廃棄物処分委託契約を締結する必要があります。

現実には、各農家が処分業者と直接契約をしている方がまれで、集荷場所提供者が排出事業者として処分業者と契約をしている方が多いのではないでしょうか?

個人的には、産業廃棄物管理票と委託契約書の交付または作成者を厳密に区別するよりも、「集荷場所提供者が代表して契約をして可」とした方が手間が掛からず、実態にも沿った手順になるように思っていますが、現段階では、そこまで踏み込んだ解釈は通知等で示されていません。