
Q:リユース(リサイクル)ショップが古着を廃棄処分する場合は、産業廃棄物の「繊維くず」として処分するのが正しい? A:「産業廃棄物」ではなく、「(事業系)一般廃棄物」に該当します。 |

「古着」はれっきとした「繊維のくず」でしょ。リサイクルショップは事業活動を行っているわけだから、産業廃棄物の「繊維くず」として処分するべきじゃないの?
廃棄物処理法の産業廃棄物の「繊維くず」の定義を確認しましょう。
廃棄物処理法施行令第2条
法第2条第4項第一号の政令で定める廃棄物は、次のとおりとする。
一~二 (略)
三 繊維くず(建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く。)に係るもの及びポリ塩化ビフェニルが染み込んだものに限る。)
四~十三 (略)
「繊維くず」は、「排出事業者の業種が限定されているもの」と、「業種に関わりなく全事業者に適用されるもの」の2種類があります。
「繊維くずの排出元に該当する排出事業者の業種」は
- 建設業(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)
- 繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く。)
の2業種となります。
「業種に関わりなく全事業者に適用されるもの」は
- PCBが染み込んだ繊維くず
の1種類だけとなります。
「繊維くず」に該当するかどうかは、上記の2業種またはPCBが染み込んだ物に当てはまるかどうかを検討することになります。
「リユース(リサイクル)ショップ」は、「建設業」ではなく、「繊維工業」でもありませんし、古着は「PCBが染み込んだもの」にも該当しないことは明らかですので、今回の古着は、「産業廃棄物の繊維くず」ではなく、「(事業系)一般廃棄物」に該当することがわかります。

「建設業」は良いとして、「衣服その他の繊維製品製造業を除く繊維工業」って具体的には何なのよ?
「廃棄物処理法」でそう決められているわけではありませんが、具体的な産業内容を見るためには、日本標準産業分類の詳細を見る必要があります。
日本標準産業分類(2023年7月改定)では、「繊維工業」として、以下の10業種が列挙されています。
平成5(2023)年7月改定版 日本標準産業分類
110 管理、補助的経済活動を行う事業所(11繊維工業)
111 製糸業、紡績業、化学繊維・ねん糸等製造業
112 織物業
113 ニット生地製造業
114 染色整理業
115 綱・網・レース・繊維粗製品製造業
116 外衣・シャツ製造業(和式を除く)
117 下着類製造業
118 和装製品・その他の衣服・繊維製身の回り品製造業
119 その他の繊維製品製造業
最新版の日本標準産業分類を見ても「衣類その他の繊維製品製造業を除く繊維工業」という区分は見当たりません。
そこで、廃棄物処理法が制定された昭和45(1970)年当時の、昭和42(1967)年5月改定版の日本標準産業分類の「製造業」を見てみましょう。
昭和42(1967)年5月改定版 日本標準産業分類
中分類20-繊維工業(衣服、その他の繊維製品を除く)
中分類21-衣服、その他の繊維製品製造業
昭和45年当時の繊維製品関連の製造業分類とは、「衣類、その他の繊維製品製造業」か「左記以外の繊維工業」かの2種類だったことがわかります。
「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の定義の仕方と同様ですね。
そのため、昭和45年当時は、「繊維くず」の発生業種である「繊維工業(衣類、その他の繊維製品を除く)」の内容が一目瞭然でした。
ちなみに、当時の「繊維工業(衣服、その他の繊維製品を除く)」の小分類は、
昭和42(1967)年5月改定版 日本標準産業分類
「201 製糸業」
「202 紡績業」
「203 ねん糸、かさ高加工糸製造業」
「204 織物業」
「205 メリヤス製造業」
「206 染色整理業」
「207 綱網製造業」
「208 レース、繊維雑品製造業」
「209 その他の繊維工業」
とされていましたので、「繊維くず」の発生業種である繊維工業は、上記の9つの小分類にあてはまるものでした。
昭和42年から令和5年の間に、半世紀という非常に長い時間が経過していますので、社会状況や産業のあり方も大きく変わっています。
令和5年版の日本標準産業分類から、「繊維くず」の対象となる繊維工業を正確に読み取るのは少々難しいかと思いますが、昭和42年版と照らし合わせると、現行の「110 管理、補助的経済活動を行う事業所」「111 製糸業、紡績業、化学繊維・ねん糸等製造業」「112 織物業」「113 ニット生地製造業」「114 染色整理業」「115 綱・網・レース・繊維粗製品製造業」「119 その他の繊維製品製造業」等が、「繊維くず」の発生業種の具体例と言えます。