保管基準を確認する作業員のイラスト
Q:産業廃棄物処分業者、積替保管業者の保管する産業廃棄物の量には具体的な数値の規定が法律で定められていないため、事業場内に保管できる最大量が保管上限となる?

A:産業廃棄物処理業者が保管する産業廃棄物の量には保管上限となる数値規定がある。
疑問

産業廃棄物処理業者の保管量ってどうやって計算するの?

産業廃棄物の保管に関しては、これまで当ブログで何度も解説しております。
2024年6月21日付「産業廃棄物の保管基準に定められている囲いは、構造上の基準が法律で定められているか?
2025年1月10日付「産業廃棄物保管場所の掲示板には保管高さを必ず記載する必要がある?

これまでの記事では、主に排出事業者に適用される保管基準について解説してきました。
今回は、産業廃棄物処理業者における保管量の基準について解説していきます。

それでは、いつもどおり条文を確認していきましょう。

(事業者の処理)
廃棄物処理法第12条
 事業者は、自らその産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。

(産業廃棄物処理業)
廃棄物処理法第14条
 産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
2 ~ 5
6 産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
12 第1項の許可を受けた者(以下「産業廃棄物収集運搬業者」という。)又は第6項の許可を受けた者(以下「産業廃棄物処分業者」という。)は、産業廃棄物処理基準に従い、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を行わなければならない。

まず、根拠となる法第12条では、排出事業者が自ら処理する際には、「産業廃棄物処理基準」に従う必要があることがさだめられています。

また、法14条において規定する産業廃棄物の処理業者も同様に「産業廃棄物処理基準」に従う義務があることが示されています。
それでは、次にその処理基準の内容を確認していきましょう。

(産業廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)
廃棄物処理法施行令第6条
 法第12条第1項の規定による産業廃棄物の収集、運搬及び処分の基準は、次のとおりとする。
一 産業廃棄物の収集又は運搬に当たつては、第3条第1号イからニまでの規定の例によるほか、次によること。
 イ ~ 二
 ホ 産業廃棄物の保管を行う場合には、第3条第1号チ及びリの規定の例によるほか、当該保管する産業廃棄物の数量が、環境省令で定める場合を除き、当該保管の場所における一日当たりの平均的な搬出量に7を乗じて得られる数量を超えないようにすること。
 ヘ 石綿含有産業廃棄物又は水銀使用製品産業廃棄物の保管を行う場合には、第3条第1号トの規定の例によること。
二 産業廃棄物の処分(埋立処分及び海洋投入処分を除く。以下この号において同じ。)又は再生に当たつては、次によること。
 イ 第3条第1号イ及びロ並びに第2号イ及びロの規定の例によること。
 ロ 産業廃棄物の保管を行う場合には、次によること。
  (1) 第3条第1号リの規定の例によること。
  (2) 環境省令で定める期間を超えて保管を行つてはならないこと。
  (3) 保管する産業廃棄物の数量が、当該産業廃棄物に係る処理施設の一日当たりの処理能力に相当する数量に14を乗じて得られる数量(環境省令で定める場合にあつては、環境省令で定める数量)を超えないようにすること。

法律では、収集運搬の場合と処分の場合との2つのケースに分けて、保管できる産業廃棄物の数量を定めています。
まず、収集運搬過程における産業廃棄物の保管(積替保管)については、「1日当たりの平均的な搬出量に7日分」と規定されています。
一方、処分については、「処理施設の1日当たりの処理能力の14日分」とされています。

積替保管 : 1日当たりの平均的な搬出量×7日分
処 分  : 処理施設の1日当たりの処理能力×14日分

例えば、500t/日の処理能力を有する施設を設置した場合、「500t/日×14日=7,000t」を保管できる計算になります。
しかし、実際には事業場の敷地面積や保管基準による高さ制限などの要因から、保管量の上限まで保管するということは難しいケースが多くみられます。

さらに、産業廃棄物の中間処理に係る保管量の上限については、例外的に上限を超えて保管できる制度が施行規則第7条の8各号に設けられています。
以下では、実務上関係する主な例外をいくつかご紹介します。

・廃プラスチック類の処理施設において「優良産業廃棄物処分業者」が処分又は再生のために保管する場合(規則第7条の8第1項第3号)
 処理能力の28日分

・建設業に係る産業廃棄物の再生を行う処理施設で保管する場合(規則第7条の8第1項第4号)
 ①木くず及びコンクリートの破片  処理能力の28日分
 ②アスファルト・コンクリートの破片  処理能力の70日分

・冬期間の豪雪地帯指定区域内の場合(廃タイヤの処理)(規則第7条の8第1項第5号)

(出典)公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターテキストより