自ら処理に許可が悩んでいる人のイラスト
Q:自社で排出した産業廃棄物を自ら処理する場合でも産業廃棄物処理業の許可が必要である?

A:自社の産業廃棄物を自ら処理する場合、産業廃棄物処理業の許可は不要である。
唖然

自分で出した産業廃棄物とはいえ、処理するのに許可不要で大丈夫なのかしら!?

もちろん、自ら排出した産業廃棄物であっても、不適切な処理が行われれば生活環境へ悪影響を及ぼすことは明らかです。それでは、廃棄物処理法では産業廃棄物の処理について、どのように規定しているか条文を確認しながら解説していきます。

まずは確認したいのが、事業者の基本的な責務を定めた条文です。

(事業者の責務)
廃棄物処理法第3条
 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。

この条文から読み取れるのは、
「自分で出したごみは、自分で責任をもって適正に処理しなさい。」
という、廃棄物処理法の大原則です。ですが、実務上は多くの事業者が自社で処理施設や人員を確保しておらず処理を他社(許可業者)委託しているのが実状です。

それでは、実際に産業廃棄物処理業の許可を規定している条文を確認します。

(産業廃棄物処理業)
廃棄物処理法第14条(抜粋)
 産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
2~5 略
6 産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を処分する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
(以下略)

皆さまもご存じのとおり法第14条第1項で収集運搬の許可を、法第14条第6項で処分業の許可を規定しています。
いずれの条文も、ただし書きがあり、その内容から事業者自らが産業廃棄物の運搬や処分をする場合(自ら処理)は許可不要としていることがわかります。

・他人の産業廃棄物を処理する場合 → 原則処理業の許可が必要
・自ら排出した産業廃棄物を、自ら処理する場合 → 処理業の許可は不要

それでは、自ら処理する場合は運搬、処分することに対して何の基準もないのでしょうか。
処理業者に基準があるわけですから、もちろん自ら処理に関しても次のとおり基準があります。

(事業者の処理)
廃棄物処理法第12条(抜粋)
 事業者は、自らその産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準に従わなければならない。
2~4 略
5 事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。
(以下略)

基本的には、少し違いはあれど許可業者とほぼ同等の基準の遵守が必要になります。詳細な処理基準に関しては、施行令第6条各号に記載がありますので、ご確認ください。
また、法第12条第5項では、他社に委託する際の義務が記載されていますので、併せてご確認ください。

ここまでの解説で自ら処理について業の許可が不要であることがわかりました。
しかし、自ら処理においても許可が必要なものがあります。それが、産業廃棄物処理施設の許可及び一般廃棄物処理施設の許可です。一定規模以上の処理能力を有する破砕施設や焼却施設などを設置する場合にあっては、「自ら処理」であっても施設の設置許可が必要となります。

この点については、過去に出題したクイズの記事で詳しく解説していますので、ご興味のある方は以下記事をご確認ください。
【関連記事】
2025年2月7日付「自ら排出した産業廃棄物を自ら処理する場合、産業廃棄物処理施設の許可は不要である?

今回の内容をまとめると

  • 事業者には「自ら排出した廃棄物を適正に処理する責任」がある
  • 自ら排出した産業廃棄物を自ら処理する場合、原則として処理業の許可は不要
  • ただし、処理基準は許可業者と同様に遵守が必要
  • 処理施設の設置には、別途許可が必要となる場合がある

「自ら処理だから許可不要」と安易に判断せず、 許可の要否と処理基準をセットで確認することが重要です。