
Q:産業廃棄物処理委託契約書は、書面で作成することが義務付けられているため電子契約はできない? A:書面のみならず電子契約も認められている。 |

前回の解説記事では、書面契約必須との解説だったと思うんだけど・・・
産業廃棄物処理委託契約書(以下、「委託契約書」)は、過去のクイズで書面での契約が必須ということを解説しました。
2025年2月21日付「産業廃棄物の処理を他人に委託する場合、書面による契約に限らず、口頭による契約でもよい?」
この解説記事において電子契約についても少し触れておりましたが、今回はその根拠を深堀してみましょう。
今回もまずは該当の条文を確認します。
(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)
廃棄物処理法施行令第6条の2 法第12条第6項の政令で定める基準は、次のとおりとする。
(中略)
4 委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。
イ 委託する産業廃棄物の種類及び数量
ロ 産業廃棄物の運搬を委託するときは、運搬の最終目的地の所在地
ハ 産業廃棄物の処分又は再生を委託するときは、その処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力
ニ 産業廃棄物の処分又は再生を委託する場合において、当該産業廃棄物が法第十五条の四の五第一項の許可を受けて輸入された廃棄物であるときは、その旨
ホ 産業廃棄物の処分を委託するときは、当該産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力
ヘ その他環境省令で定める事項
5 前号に規定する委託契約書及び書面をその契約の終了の日から環境省令で定める期間保存すること。
(以下略)
廃棄物処理法施行令では、委託契約は書面契約とその書面の保存が義務付けられています。よって、口頭契約だけでは委託基準違反になります。ここまでは、前回の解説記事でもお話しました。
それでは、電子契約は廃棄物処理法のどこに記載があるのでしょうか。
実は、電子契約に関しては廃棄物処理法ではなく、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(通称「e-文書法」)を確認する必要があります。
e-文書法では、次のように定めています。
(電磁的記録による保存)
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成16年法律第149号)
e-文書法第3条 民間事業者等は、保存のうち当該保存に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの(主務省令で定めるものに限る。)については、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、書面の保存に代えて当該書面に係る電磁的記録の保存を行うことができる。
条文のとおり、原則書面での義務付けがされているものに関して電磁的記録(電子データ)での保存でもよいとしています。それでは、廃棄物処理法において、どのような書類が電子保存を可とされているのでしょうか。
(法第3条第1項の主務省令で定める保存)
環境省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則(平成17年環境省令第9号)
e-文書法施行規則第3条 法第3条第1項の主務省令で定める保存は、別表第1の上欄に掲げる法令の同表の下欄に掲げる規定に基づく書面の保存とする。
廃棄物処理法に関して別表1を確認してみると次の条文が該当することになっています。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律 | 第7条第15項及び第16項、第9条の9第5項(第15条の4の3第3項において準用する場合を含む。)及び第9条の10第5項(第15条の4の4第3項において準用する場合を含む。)においてみなして適用する場合を含み、第12条第13項、第12条の2第14項、第14条第17項及び第14条の4第18項において準用する場合を含む。)、第13条の8、第14条第14項、第14条の2第5項(第14条の3の2第4項(第14条の6において準用する場合を含む。)及び第14条の5第5項において準用する場合を含む。)並びに第14条の4第14項 |
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 | 第3条第1号ニ(第6条第1項第1号及び第6条の5第1項第1号においてその規定の例によることとする場合を含む。)、第6条第1項第1号イ(第6条の5第1項第1号においてその規定の例によることとする場合を含む。)、第6条の2第4号及び第5号(第6条の6第2号、第6条の12第4号及び第6条の15第2号において、それらの規定の例によることとする場合を含む。)並びに第6条の2第6号(第6条の6第2号においてその規定の例によることとする場合を含む。) |
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則 | 第6条の19第2項、第10条の7第1号ニ及びヘ並びに第13条の12第1項から第3項まで |
このうち、今回のテーマの「委託契約書」に関する条文は施行令第6条の2第4号、第5号です。
よって、e-文書法によって、廃棄物処理法における委託契約書は作成や保存が電子データでよいとされていると言えます。
その他、実務において重要な電子保存可能の文書を参考に示します。
・一般廃棄物収集運搬業及び一般廃棄物処分業の帳簿(法第7条第15項)
・政令で定める産業廃棄物の排出事業者のの帳簿(法第12条第13項)
・政令で定める特別管理産業廃棄物の排出事業者の帳簿(法第12条の2第14項)
・産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者の帳簿(法第14条第14項)
・産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物収集運搬業者の処理困難通知(法第14条の2第5項)
・特別管理産業廃棄物収集運搬業者及び特別管理産業廃棄物処分業者の帳簿(法第14条の4第14項)
・船舶を用いる一般廃棄物収集運搬業者が船舶に備えるべき書類(令第3条第1号ニ)
・産業廃棄物収集運搬業者が運搬車又は船舶に備えるべき書面(令第6条第1項第1号)
・産業廃棄物処理業者の再委託契約書(規則第10条の2第1号ニ)
・有害使用済機器保管事業者の帳簿(規則第13条の12第1項)
はじめまして。
尾上様のメルマガからこちらのサイトに誘導され(笑)、とても役立つ内容なので助かっています。
実はこの件、ちょうど昨日、環境管理のスペシャリスト(?)の安達宏之さんの環境法セミナーを受講しておりまして、その講義中に僕が質問した内容でした。
回答は橋本様のお答え同様でしたが、「ハードルが高く、ダメではないが時間を割いてまで突破することでもない(現時点では文書契約の方が良い)。」という助言でした。
これからもご期待申し上げます。
ステップ様、はじめまして。
いつもご覧いただきありがとうございます。
また、コメントありがとうございました。
今後も役立つ情報を発信して参ります。