委託契約書のイメージ画像
Q. 産業廃棄物委託契約書は、収集運搬業者、処分業者が異なる場合でも合意がとれていれば、3者契約が可能との規定が廃棄物処理法に定めてある?

A. 定めていない。排出事業者が異なる収集運搬業者、処分業者に委託する場合、それぞれの事業者と契約する必要がある。

民法において、【契約】は「当事者の意思表示の合致」があれば、書面がなくても成立すると定めています。よって、口頭でも契約は成立するものです。

しかし、廃棄物処理法では、廃棄物の処理を他人に委託する場合、書面での契約が義務付けられています。
この書面が、産業廃棄物委託契約書(以下、「委託契約書」)です。
また、委託契約書の締結義務は、排出事業者と定められています。

それでは、委託契約書は法律のどこに記載があるのでしょうか。

(事業者の処理)※一部略
第12条
事業者は、自らその産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。
(中略)
5 事業者(中間処理業者を含む。次項及び第七項並びに次条第五項から第七項までにおいて同じ。)は、その産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除くものとし、中間処理産業廃棄物(発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程の中途において産業廃棄物を処分した後の産業廃棄物をいう。以下同じ。)を含む。次項及び第七項において同じ。)の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。
 事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)

(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)
第6条の2
法第12条第6項の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 産業廃棄物の運搬にあつては、他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であつて委託しようとする産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれるものに委託すること。
二 産業廃棄物の処分又は再生にあつては、他人の産業廃棄物の処分又は再生を業として行うことができる者であつて委託しようとする産業廃棄物の処分又は再生がその事業の範囲に含まれるものに委託すること。
(中略)
四 委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。
 イ 委託する産業廃棄物の種類及び数量
 ロ 産業廃棄物の運搬を委託するときは、運搬の最終目的地の所在地
 ハ 産業廃棄物の処分又は再生を委託するときは、その処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力
 ニ 産業廃棄物の処分又は再生を委託する場合において、当該産業廃棄物が法第十五条の四の五第一項の許可を受けて輸入された廃棄物であるときは、その旨
 ホ 産業廃棄物の処分を委託するときは、当該産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)

法律では、廃棄物の処理を他人に委託する場合に基準を設けています。
その基準に委託契約は「書面で行うこと」が明記されています。

しかし、今回の問題にあった、「三者での契約の禁止」「二者間契約の原則」はどこにも記載がありません。
それでは、排出事業者は誰とどのような契約をすればいいのでしょうか。

先ほどの政令を再掲します。

(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)
第6条の2
法第12条第6項の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 産業廃棄物の運搬にあつては、他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であつて委託しようとする産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれるものに委託すること。
二 産業廃棄物の処分又は再生にあつては、他人の産業廃棄物の処分又は再生を業として行うことができる者であつて委託しようとする産業廃棄物の処分又は再生がその事業の範囲に含まれるものに委託すること。

(以下略)

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)

政令にあるとおり、「収集運搬業の許可」、「処分業の許可」を取得した事業者に委託する必要があるので、以下の図に示すとおり、例えば収集運搬業の許可のみ、処分業の許可のみを持った事業者とは、それぞれ【二者間】で契約する必要があります。

収集運搬、処分いずれの許可も取得している事業者は、両方(収集運搬、処分)の委託契約書を結ぶことができます。
この場合も、排出事業者と処理業者(収集運搬、処分の許可を持つ業者)の「二者」しか登場しません。

問題にあった三者契約とは、「排出事業者」、「収集運搬業者」、「処分業者」の三者が契約を結ぶことを言います。
先ほどの説明から契約には「二者」しか登場しないので、三者契約は法律の趣旨からするとあり得ないように思います。

しかし、例えば「排出事業者」が「収集運搬業者」に「処分業者」の選定も任せて委託契約書の全てを丸投げしていた場合、依頼した収集運搬業者が悪意を持って許可も持たない処分業者の名前を勝手に記載して三者契約を成立させることができます。

無法者

排出事業者はゴミの処理なんて興味あらへん。契約書のことも知らんから適当な業者書いといて、受けた廃棄物はそこらへん埋めといたら、ワシらめっちゃ儲かるで!

三者契約は、法律で禁じられていたり、違法性があるわけではありません。
しかし、上記のようなリスクが考えられるため望ましくありません。よって、委託契約書は法律の趣旨に基づき、二者で契約することが望ましいでしょう。

自身の排出する産業廃棄物を適正に処分するためにも、委託する処理業者を見極めたうえで委託契約書を締結するようにしましょう。