排出事業者が委託契約書であらかじめ再委託に同意していれば、処理業者はその都度承諾を得なくても、自由に再委託できる?
尾上雅典
この記事の執筆者
尾上雅典
行政書士 / 廃棄物法務コンサルタント
「廃棄物実務クエスト」共同執筆者
Q:排出事業者が委託契約書であらかじめ再委託に同意していれば、処理業者はその都度承諾を得なくても、自由に再委託できる?
A:廃棄物処理法で認められた再委託の方法とは異なるため、契約書による事前の包括的な承諾だけでは、再委託は認められないと考えられます。

疑問

いちいち、再委託の承諾書を作るのは面倒なので、契約書で定めておく方が合理的なのでは?

産業廃棄物処理業者による再委託は、廃棄物処理法で原則として禁止されています(法第14条第16項)。

例外的に再委託が認められる場合でも、法令で定められた再委託基準を遵守する必要があります。

委託契約書にあらかじめ再委託を承諾する条項があるからといって、処理業者が自由に再委託できるわけではありません。

解説

1.そもそも「再委託」とは何か?

再委託とは、排出事業者から産業廃棄物の処理を受託した処理業者が、その処理をさらに別の処理業者に委託することです。

例えば、排出事業者A社が収集運搬業者B社に産業廃棄物の運搬を委託したにもかかわらず、B社がその運搬を別の収集運搬業者C社に委託する場合が該当します。

この場合、B社からC社への委託が「再委託」です。

これに対して、排出事業者A社がB社とC社のそれぞれと直接委託契約を締結し、運搬区間を分担させる場合は、再委託には該当しません。

廃棄物処理法が再委託を原則禁止しているのは、処理業者から別の処理業者へと委託が繰り返されることで、処理責任の所在が不明確になり、不適正処理を誘発するおそれがあるためです。

2.委託契約書に再委託の事前承諾条項があれば有効か?

例えば、委託契約書に次のような条項があったとします。

「受託者は、本契約に基づく産業廃棄物の収集運搬業務を株式会社Cに再委託できるものとし、委託者はこれをあらかじめ承諾する。」

再委託先が具体的に特定されており、排出事業者も契約書に署名等をしているのだから、再委託のたびに承諾書を作成する必要はない、と考える人がいるかもしれません。

しかし、このような包括的な事前承諾は、廃棄物処理法の再委託規制の趣旨に反するものです。

その理由を、条文に沿って確認してみましょう。

① 再委託は原則禁止されている

廃棄物処理法第14条第16項では、産業廃棄物処理業者による再委託を原則として禁止し、例外的に政令で定める基準に従う場合に限って再委託を認めています。

つまり、再委託は処理業者が当然に行える行為ではなく、例外的な措置として位置付けられています。

② 承諾の対象は、具体的な再委託である

廃棄物処理法施行令第6条の12第1号では、再委託の基準として、再受託者の氏名又は名称などを排出事業者に明らかにした上で、

「当該委託について当該事業者の書面(環境省令で定める事項が記載されたものに限る。)による承諾を受けていること」

と規定しています。

ここで重要なのは、「当該委託について」という文言です。

承諾の対象となるのは、将来の再委託を無条件に認めることではなく、具体的に行おうとする再委託です。

③ 承諾書には産業廃棄物の種類及び数量の記載が必要

廃棄物処理法施行規則第10条の6の6では、再委託の承諾書に記載すべき事項として、次の事項を定めています。

  • 委託した産業廃棄物の種類及び数量
  • 受託者の氏名又は名称、住所及び許可番号
  • 承諾の年月日
  • 再受託者の氏名又は名称、住所及び許可番号

特に注目したいのは、産業廃棄物の「数量」です。

例えば、年間100トンの運搬を委託する契約において、そのうち何トンを再委託するかも分からないまま、契約期間中の再委託を包括的に承諾することは、個別の再委託について排出事業者に判断させるという制度趣旨にそぐいません。

再委託先の名称が契約書に記載されているというだけでは、法定記載事項を満たしたことにもなりません。

④ 排出事業者自身が再委託の適正性を確認する必要がある

平成10年5月7日付厚生省通知(衛環第37号)「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部改正について」では、再委託の承諾について、次のように示されています。

「当該再委託が委託基準に適合していることを自らも確認の上、書面による承諾を与えるよう指導されたいこと。」

この通知は、排出事業者が単に承諾の意思を示せばよいのではなく、再委託の適正性を自ら確認することを求めています。

再委託先の許可内容や処理能力は、契約締結時と実際の再委託時とで変化している可能性があります。

それにもかかわらず、数年前に締結した委託契約書の承諾条項だけを根拠に再委託を繰り返すことは、排出事業者による確認を形骸化させてしまいます。

⑤ 再委託の都度、独立した承諾書を作成すべき

以上を総合すると、再委託を行う際には、その都度、委託契約書とは独立した再委託承諾書を作成すべきです。

  • 再委託を原則禁止した趣旨
  • 個別の再委託について書面承諾を要求する施行令の規定
  • 承諾書に産業廃棄物の種類及び数量などを記載させる施行規則の規定

を勘案すると、委託契約書であらかじめ、将来の再委託を包括的に承諾する運用は認められないと考えられます。

委託契約書に再委託先をあらかじめ明記した場合、産業廃棄物処理業者は再委託を自由にできるとなると、
その産業廃棄物処理業者自身は産業廃棄物の処理を一切することがなく、他のより安く処理する業者に再委託し続けることが可能となってしまいます。

これでは、闇のブローカーが跳梁跋扈するだけとなり、再委託を原則禁止した意味がなくなってしまいます。

再委託の承諾は、委託契約書に一度記載すれば済む形式的な手続ではなく、個々の再委託について排出事業者が適正性を確認し、判断するための手続です。

3.実際に再委託が想定されるのはどのような場合か?

再委託は、処理業者の都合で自由に利用できる仕組みではありません。

環境省の平成17年9月30日付通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律等の施行について」では、中間処理産業廃棄物の再委託について、適正処理を確保するためにやむを得ず行われる場合を想定した説明がなされています。

では、実際にどのような事情が想定されるのでしょうか?

① 収集運搬車両が突然故障した場合

収集運搬業者が使用する車両が突然故障し、予定していた運搬を自社で実施できなくなった場合です。

代替車両を確保できず、産業廃棄物の適正な処理を確保するために、別の許可業者に運搬を依頼する必要が生じることが考えられます。

② 処理施設が突然故障した場合

処分業者の処理施設が突然故障し、受託した産業廃棄物を予定どおり処理できなくなった場合です。

施設の復旧まで待つことが困難で、適正処理を確保するために別の処分業者への委託が必要になることが考えられます。

これらは、再委託が必要となる具体的な場面の例です。

ただし、車両や施設が故障したからといって、自動的に再委託が認められるわけではありません。

再委託を行う場合には、法令上の再委託基準を遵守する必要があります。

また、車両や施設の復旧の見込みが立たず、継続的な再委託が必要となる場合には、排出事業者が別の処理業者と直接契約する方法を検討すべきです。

4.再委託を行う場合の正しい方法

やむを得ない事情によって再委託を行う場合でも、処理業者が独断で再委託先を決め、産業廃棄物を引き渡してよいわけではありません。

基本的には、次の手順が必要です。

① 再委託先の許可内容を確認する

再委託先が、委託しようとする産業廃棄物の種類や処理内容に対応した許可を有していることを確認します。

② 排出事業者に再委託の内容を説明する

再委託先の名称や委託基準への適合性など、法令で求められる事項を排出事業者に明らかにします。

実務上は、再委託が必要となった事情も説明し、排出事業者がその必要性を判断できるようにすることが望まれます。

③ 排出事業者から書面による承諾を受ける

再委託を実施する前に、排出事業者から法定事項を記載した書面による承諾を受けます。

口頭での承諾だけでは足りません。

また、承諾書は法令で定められた期間、保存する必要があります。

実務上は、委託契約書とは別に、今回の再委託についての承諾書を作成し、再委託の対象や承諾年月日を明確にしておくべきです。

④ 再受託者に必要な書面を交付する

再委託する処理業者は、再受託者に対して、当初の委託契約書の法定記載事項を記載した文書を交付するなど、再委託基準に従った手続を行う必要があります。

特別管理産業廃棄物の場合には、必要な情報の通知にも注意が必要です。

⑤ マニフェストによる処理状況の確認を行う

再委託を行った場合でも、産業廃棄物の処理状況を適切に把握する必要があります。

再委託を承諾したからといって、排出事業者の処理責任がなくなるわけではありません。

なお、再委託を受けた業者が、さらに別の業者へ再々委託することは認められません。

5.まとめ

産業廃棄物の再委託は、処理業者が自社の業務を効率化するために自由に利用できる制度ではありません。

原則として禁止されている再委託について、法令で定められた基準を満たす場合に限り、例外的に認められるものです。

したがって、委託契約書に再委託先を特定した承諾条項があるからといって、それだけで契約期間中の再委託を自由に行えるわけではありません。

再委託が必要となった場合には、排出事業者がその都度、具体的な再委託の内容と適正性を確認し、当初の産廃処理委託契約書とは別の書面によって承諾するべきです。

また、再委託が恒常的に必要となるのであれば、排出事業者が当該処理業者と直接契約した方が良いでしょう。

「契約書に書いてあるから事前に承諾していたことになる」と曲解するのではなく、再委託を原則禁止とした制度趣旨に立ち返って判断することが重要です。

尾上雅典
この記事の著者

尾上雅典

行政書士 / 廃棄物法務コンサルタント

廃棄物処理法、委託基準、処理委託契約、許可実務などを中心に、制度の構造と実務判断を整理しています。

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