水銀廃棄物の処理に困る事業者
Q:水銀を含む産業廃棄物を処理する場合は、すべて特別管理産業廃棄物処理業の許可が必要である?

A:産業廃棄物処理業の許可で扱える水銀廃棄物もある。
疑問

水銀廃棄物って危険そうだけど、普通の産廃業者でも扱えるの?

水銀廃棄物と言われても、あまりなじみのない方にとっては、想像しづらい廃棄物ではないでしょうか。
身近な水銀廃棄物を例示すると、蛍光灯や乾電池などが該当します。

水銀は化学的に優れた機能を持ち、製品になくてはならない素材として利用されてきました。
そのようにお伝えすると、「素晴らしい元素だ!」と思われるかもしれませんが、その優れた性能に反して人体や環境に対して多くの悪影響を及ぼすことがわかっています。水銀公害で有名なのが、1950年代に熊本県水俣市などで発生した「水俣病」です。

このような話の流れを聞くと、環境関連の有害物質に詳しい方であれば、石綿(アスベスト)、PCB、フロンなどを思い浮かべるのではないでしょうか。夢のような素材には、こうした問題がつきものなのかもしれません。

前置きが長くなりましたが、今回も廃棄物処理法上の水銀廃棄物の定義について、条文を確認していきます。

(産業廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)
廃棄物処理法施行令第6条

 法第12条第1項の規定による産業廃棄物の収集、運搬及び処分(再生を含む。)の基準は、次のとおりとする。
一 産業廃棄物の収集又は運搬に当たつては、第3条第1号イからニまでの規定の例によるほか、次によること。
 イ 運搬車の車体の外側に、環境省令で定めるところにより、産業廃棄物の収集又は運搬の用に供する運搬車である旨その他の事項を見やすいように表示し、かつ、当該運搬車に環境省令で定める書面を備え付けておくこと。
 ロ 石綿が含まれている産業廃棄物であつて環境省令で定めるもの(以下「石綿含有産業廃棄物」という。)又は水銀若しくはその化合物が使用されている製品が産業廃棄物となつたものであつて環境省令で定めるもの(以下この項において「水銀使用製品産業廃棄物」という。)の収集又は運搬を行う場合には、第3条第1号ホの規定の例によること。
(以下略)

(産業廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)
廃棄物処理法施行令第6条

 法第12条第一項の規定による産業廃棄物(特別管理産業廃棄物以外のものに限るものとし、法第2条第4項第2号に掲げる廃棄物であるもの及び当該廃棄物を処分するために処理したものを除く。以下この項(第3号イ及び第4号イを除く。)において同じ。)の収集、運搬及び処分(再生を含む。)の基準は、次のとおりとする。
一 略
二 産業廃棄物の処分(埋立処分及び海洋投入処分を除く。以下この号において同じ。)又は再生に当たつては、次によること。
イ~ニ 略
ホ 水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等(水銀又はその化合物が含まれているばいじん、燃え殻、汚泥、廃酸、廃アルカリ又は鉱さいであつて、環境省令で定めるものをいう。(2)において同じ。)の処分又は再生を行う場合には、次によること。
(1) 水銀又はその化合物が大気中に飛散しないように必要な措置を講ずること。
(2) 水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等であつて、これらの産業廃棄物に使用され、又は含まれている水銀又はその化合物の割合が相当の割合以上であるものとして環境省令で定めるものの処分又は再生を行う場合には、あらかじめ、環境大臣が定める方法により水銀を回収すること。
(3) 水銀使用製品産業廃棄物の保管を行う場合には、第3条第1号トの規定の例によること。
(以下略)

産業廃棄物の定義が記載されている施行令第2条には、水銀廃棄物の記載はありません。一方で、処理基準を定めた部分に水銀廃棄物として「水銀使用製品産業廃棄物」や「水銀含有ばいじん等」という区分が登場します。

さらに、施行規則において「水銀使用製品産業廃棄物」および「水銀含有ばいじん等」の具体的な定義が定められています。

(水銀使用製品産業廃棄物)
廃棄物処理法施行規則第7条の2の4

 令第6条第1項第1号ロの水銀又はその化合物が使用されている製品が産業廃棄物となつたものであつて環境省令で定めるものは、次に掲げるものが産業廃棄物となつたものとする。
一 新用途水銀使用製品の製造等に関する命令(平成27年内閣府・総務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省令第2号)第2条第1号又は第3号に該当する水銀使用製品であつて別表第4に掲げるもの
二 前号に掲げる水銀使用製品を材料又は部品として用いて製造される水銀使用製品(別表第4下欄に×印のあるものに係るものを除く。)
三 前2号に掲げるもののほか、水銀又はその化合物の使用に関する表示がされている水銀使用製品

(水銀含有ばいじん等)
廃棄物処理法施行規則第7条の8の2

 令第6条第1項第2号ホの環境省令で定めるものは、次の各号の区分に応じ、当該各号に定めるもの(廃水銀等又は令第2条の4第5号ヘ、チ(1)若しくはル(1)に掲げる廃棄物を除く。)とする。
一 ばいじん、燃え殻、汚泥又は鉱さい 水銀(水銀化合物に含まれる水銀を含む。以下この条、次条及び第8条の10の3の2において同じ。)を当該ばいじん、燃え殻、汚泥又は鉱さい1キログラムにつき15ミリグラムを超えて含有するもの
二 廃酸又は廃アルカリ 水銀を当該廃酸又は廃アルカリ1リットルにつき15ミリグラムを超えて含有するもの

この「水銀使用製品産業廃棄物」は、条文にも記載のとおり、「水銀又はその化合物が使用されている製品が産業廃棄物となつたもの」とされています。
したがって、「水銀使用製品産業廃棄物」は特別管理産業廃棄物ではなく通常の産業廃棄物であるということがわかります。

また、「水銀含有ばいじん等」については条文上「産業廃棄物」と明示されているわけではありませんが、廃水銀等や令第2条の4に記載の廃棄物が除外されていることがわかります。この令第2条の4の条文は、以下のとおり特別管理産業廃棄物を定めた条文です。

(特別管理産業廃棄物)
廃棄物処理法施行令第2条の4

 法第2条第5項(ダイオキシン類対策特別措置法第24条第2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の政令で定める産業廃棄物は、次のとおりとする。
一~四 略
五 特定有害産業廃棄物(次に掲げる廃棄物をいう。)
イ~ハ 略
ニ 廃水銀等(廃水銀及び廃水銀化合物であつて、人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして環境省令で定めるものをいう。以下同じ。)及び当該廃水銀等を処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)
ホ 略
ヘ 第2条第8号に掲げる廃棄物(事業活動に伴つて生じたものに限る。以下「鉱さい」という。)(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)及び当該鉱さいを処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)
チ 第2条第12号に掲げる廃棄物(事業活動に伴つて生じたものに限るものとし、法第2条第4項第2号に掲げる廃棄物の焼却に伴つて生じたばいじんであつて集じん施設によつて集められたものを除く。次号、第7号及び第9号、第3条第3号並びに別表第1を除き、以下「ばいじん」という。)であつて次に掲げるもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)及び当該ばいじんを処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)
(1) ばいじんであつて、水銀又はその化合物を含むもの
リ~ヌ 略
ル 次に掲げる汚泥、廃酸又は廃アルカリ(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)
(1) 汚泥、廃酸又は廃アルカリであつて、水銀又はその化合物を含むもの

水銀廃棄物における特別管理産業廃棄物は、「廃水銀等」と、「鉱さい、ばいじん、汚泥、廃酸又は廃アルカリのうち水銀又はその化合物を含むもの」です。

この法律的な構造は、以前解説した石綿廃棄物と似ています。
2024年9月12日付「石綿(アスベスト)産業廃棄物は、危険な廃棄物なので、特別管理産業廃棄物処理業者しか扱えないのか?

ここまで条文で確認しましたが、少しわかりにくいと感じた方もいるかもしれません。
そこで、環境省の資料の中に、水銀廃棄物の定義をわかりやすく整理されたものがありましたので、ご紹介します。

以上の定義から、製品として水銀を含有している廃棄物は産業廃棄物となりますが、製品から回収した水銀や水銀そのものについては、特別管理産業廃棄物に該当します。

水銀廃棄物の廃棄物処理法上の定義を整理すると、以下のとおりです。

・水銀使用製品廃棄物 → 産業廃棄物
・水銀含有ばいじん等 → 産業廃棄物
・廃水銀等      → 特別管理産業廃棄物

よって、今回のクイズにあった「すべて特別管理産業廃棄物処理業者しか扱えない」というのは誤りということがわかります。

水銀廃棄物の詳細について、さらに詳しく知りたい方は環境省のチラシをご確認ください。
水銀廃棄物の適正処理について、新たな対応が必要になります。(リーフレット) [PDF 0.4MB]