専ら物を扱い業者のイラスト
Q:専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみを運搬、処分する業者であっても、産業廃棄物を扱うため産業廃棄物処理業の許可が必要である?

A:専ら物のみを扱う場合、産業廃棄物処理業の許可は不要である。
疑問

専ら物は「廃棄物」なのに運搬するにも処分するにも許可がいらないの?

たしかに「専ら物」は、有価物ではなく廃棄物に該当しますので、廃棄物処理法の規制を受けるように思いますが、許可不要となる根拠はどこにあるのでしょうか。
その根拠は、産業廃棄物の収集運搬や処分に関する営業許可の根拠条文である廃棄物処理法第14条に規定があります。この条文において、専ら物については許可を要しない旨が明記されており、これが「専ら物」の特例的な取扱いの根拠となっています。

(産業廃棄物処理業)
廃棄物処理法第14条
 産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
2~5 略
6 産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を処分する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
(以下略)

産業廃棄物の収集運搬や処分を行うには、原則として都道府県知事の許可を受ける必要があります。ところが、廃棄物処理法第14条のただし書きにおいて、「専ら物」のみを収集運搬または処分する者は許可を要しないことが明記されています。
それでは、許可不要な「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物」とは何を指すのでしょうか。実は法律本文には具体的な定義が記されていません。その代わり、過去の環境省通知により、次の4種類の廃棄物が例示されています。

産業廃棄物の処理業者であっても、もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。

昭和46年10月16日環整43号 環境省通知 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について

これらはいずれも、再生資源としての利用価値が高く、通常の産業廃棄物とは異なる扱いが認められているのです。

さらに、過去の判例において最高裁判所は、「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物」を次のように定義しています。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律14条1項ただし書にいう「もつぱら再生利用の目的となる産業廃棄物」とは、その物の性質及び技術水準等に照らし再生利用されるのが通常である産業廃棄物をいう。

 昭和56年1月27日  最高裁判所第二小法廷 「 廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反、農地法違反

通知や判例から整理すると、現在「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物」として明確に示されているのは、「古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維」の4種類に限定されています。ただし、これは現時点での例示に過ぎず、将来的にはリサイクル技術の発展や社会的ニーズの変化に伴い、その範囲が広がる可能性もあります。

また、条文上の表現だけを見ると「専ら物のみを扱う事業者」に限定して許可不要と読めますが、実際には環境省通知により、専ら物以外の処理を主として行っている事業者であっても、専ら物の収集運搬・処分については許可を要しないとされています。

 専ら再生利用の目的となる一般廃棄物又は産業廃棄物のみの収集若しくは運搬又は処分(以下「処分等」という。)を業として行う者については、その業を行うに当たって廃棄物処理業の許可は要しないとされている(法第7条第1項ただし書及び第6項ただし書並びに及び第 14 条第1項ただし書及び第6項ただし書)。また、事業者が、その一般廃棄物又は産業廃棄物の処分等を他人に委託する場合には、これらの者に委託できるとされており(法第6条の2第6項及び第 12 条第5項)、この場合には、産業廃棄物管理票の交付を要しないとされている(法第 12 条の3第1項)。
 このことは、専ら再生利用の目的となる廃棄物以外の廃棄物の処分等を主たる業として行っている者であっても同様であり、当該専ら再生利用の目的となる廃棄物の処分等については、廃棄物処理業の許可は要しない。ただし、専ら再生利用の目的となる廃棄物であっても、それが再生利用されないと認められる場合には当該許可が必要であることに留意されたい。

令和5年2月3日 環境省通知 専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて(通知)

通知にもあるとおり、専ら物を扱う場合、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付は不要です。この点については、過去のクイズで詳しく解説しておりますので併せてご確認ください。

2025年5月16日付 「金属くずを専ら業者に回収に来てもらう場合は、産業廃棄物管理票(紙マニフェスト)の運用が必要?