産業廃棄物処理業者提供の契約書に記載漏れがあった場合は、処理業者の過失であるので、排出事業者は刑事罰の対象にならない?
Q:産業廃棄物処理業者提供の契約書書式に法定記載事項に関する記載漏れがあった場合は、処理業者の過失であるので、排出事業者は刑事罰の対象にならない?
A:法定記載事項を網羅した委託契約書を作成・保存することは委託者である排出事業者固有の責任ですので、処理業者に過失があったのだとしても、委託者としての責任が問われることになります。
疑問

プロフェッショナルの業者が用意してくれた契約書なのに、なんでそんな間違いが起きるの?

たしかに、産業廃棄物処理業者は、「産業廃棄物処理業許可証」を所持している“プロフェッショナル”には違いありませんが、全員が「契約書のプロ」というわけではなく、廃棄物処理法上の問題の無い契約書を提供してくれるかどうかは、個々の処理業者の知識レベル次第と言わざるを得ません。

いい加減な処理業者がよくやる手抜き(?)アドバイスは、
(委託料金を弾力的に変更させたいので)「委託料金は見積書記載のとおりでどうですか?」

というものです。

この手抜きアドバイスを鵜呑みにして契約書を作成してしまうと、往々にして、見積書は金額の確認後すぐに廃棄されることが多いため、契約書と見積書をセットで保存していない、すなわち「委託料金を定めていない」契約書を延々と保存し続けることになります。

こうして、“プロ”処理業者のアドバイスに従ったにもかかわらず、排出事業者自身は意識することなく、委託基準違反の証拠を自ら作成・保存し続ける羽目になります。

このように、契約書に関していい加減な処理業者が存在する最大の理由は、
2024年7月26日付 「産業廃棄物処理委託契約書を保存していない産業廃棄物処理業者は刑事罰の対象になる?」で見たとおり、
「委託契約書の作成と保存」は、委託者である排出事業者だけに義務づけられている委託基準の一つであり、処理業者には委託契約書の作成や保存義務が無いためです。

よって、法定記載事項が漏れたまま委託契約書を作成・保存していた排出事業者が、「プロが提供した契約書をそのまま運用しただけなので、契約書に不備があったのだとしても、排出事業者である我が社に過失は無い!」と主張したとしても、それが認められることはありません。

もっとも、処理業者が契約書に関し、排出事業者に積極的に違法行為を薦めたような場合、その処理業者は「違反行為を唆した」ことになるため、「事業の停止処分」や、悪質性が高い場合は「許可取消」の対象になります。

環境省は、「行政処分の指針」で、違法行為の「要求」「依頼」「唆し」をした処理業者については、厳格な行政処分を実施すべし!という方針を明記しています。

取引相手の無知につけ込み、違法行為を唆す処理業者は悪質であることは間違いありませんが、排出事業者が自己の義務を正確に認識していれば、そのような怪しい処理業者に騙されることはありません。

自己、あるいは自社防衛のためにも、委託契約書という言ってみれば紙切れでつまづかないように、廃棄物処理法の関連規定を正確に把握しておくことが不可欠です。

産業廃棄物処理委託契約書の法定記載事項は下記のとおりですので、記載漏れが発生しないようにご注意ください。