| Q:産業廃棄物処理業者の役員が自動車運転過失致死罪で有罪(拘禁刑)となっても、執行猶予付きの場合は欠格要件の対象にならない? A:執行猶予期間中は刑の執行が猶予されているだけであるため、拘禁刑以上の刑事罰が科された場合は欠格要件の対象になります。 |
刑務所に収監されずに一般社会で生活しているのに、なぜ欠格要件者になるの?
その理由を解説する前に、刑事罰の有無に関する産業廃棄物処理業の欠格要件を定めた条文を見ておきましょう。
廃棄物処理法第7条
1~4 (略)
5 市町村長は、第一項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一~三 (略)
四 申請者が次のいずれにも該当しないこと。
イ・ロ (略)
ハ 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
(以下略)
2025年6月1日から、刑法改正により「懲役刑と禁錮刑」が「拘禁刑」に一本化されましたので、「拘禁刑」という名称に馴染みが無い方が多いかもしれません。
従前の廃棄物処理法では、「禁錮刑以上の刑」が欠格要件とされていましたので、実質的には刑罰の名称が変わっただけとなります。
執行猶予付き判決の場合、刑の執行を受けていないため、「刑の執行を受けることがなくなった」ように思えてしまいますが、正確には「刑の執行が猶予されている状態」であるため、刑の執行が終わったわけではなく、刑の執行を受けることが無くなったことが確定したわけでもありません。
そのため、執行猶予期間が満了するまでの間は、産業廃棄物処理業の欠格者であり続けます。

逆に、執行猶予期間を無事に満了することができた場合は、その時点から欠格者ではなくなります。
執行猶予期間の満了後、さらに5年間の経過を待つ必要はありません。
ただし、環境省は「行政処分の指針」において、執行猶予期間を満了した場合でも、「おそれ条項」の適用対象になり得ると説いていることにご注意ください。
「行政処分の指針」(令和3年4月)
法第7条第5項第4号ハの「執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」とは、刑法第31条による刑の時効によりその執行の免除を受け、又は恩赦法第8条により刑の執行の免除を受けてから5年を経過しない者などをいうものであること。
なお、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は、同号ハに該当するが、この者が執行猶予を取り消されることなく執行猶予の期間を経過したときは、刑法第27条により刑の言渡しの効力そのものが失われることから、同号ハに該当しないことになるものの、同号チに該当し得るものであり、刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者が執行猶予を取り消されることなく執行猶予の期間を経過したときは、刑法第27条の7により、刑がその懲役又は禁錮を執行が猶予されなかった部分の期間(以下「実刑期間」という。)を刑期とする懲役又は禁錮に減軽され、実刑期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日において、刑の執行を受け終わったものとされることから、この者は、実刑期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない間、同号ハに該当すること。
「同号ハ」は、今回の記事で紹介した欠格要件です。
「同号チ」は、廃棄物処理法第7条第5項第四号チの「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」となります。