「下請」と「元請」が合意すれば、建設廃棄物の排出事業者を「下請」とすることは可能?

 

Q:「下請」と「元請」が合意すれば、建設廃棄物の排出事業者を「下請」とすることは可能?

A:廃棄物処理法第21条の3で、「建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業を営む者(「元請業者」)を事業者とする」と明示されているため、「元請」だけが建設廃棄物の排出事業者となります。

廃棄物処理法第21条の3(建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外) 第1項

 土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によつて行われる場合にあつては、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についてのこの法律(第三条第二項及び第三項、第四条第四項、第六条の三第二項及び第三項、第十三条の十二、第十三条の十三、第十三条の十五並びに第十五条の七を除く。)の規定の適用については、当該建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業(建設工事を請け負う営業(その請け負つた建設工事を他の者に請け負わせて営むものを含む。)をいう。以下同じ。)を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする。

廃棄物処理法第21条の3は、2010(平成22)年改正で新設された条文です。

廃棄物処理法で個別の業種を排出事業者として明示した条文は、この第21条の3しかありません。

「建設工事の元請業者」を唯一無二の排出事業者として法律上に明記した理由を、環境省は、平成23年2月4日に発出した「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律等の施行について」で、次のように説明しています。

 

第十七 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理責任を明確化するための措置
1 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理の責任
 土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によって行われる場合には、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物について実際に排出した事業者を特定することは困難な場合もあり、その処理責任の所在が曖昧になりやすいという構造にある。
 このため、都道府県知事が行政処分を行う相手方が不明確となり、このような廃棄物の適正処理を確保するための措置を適切に執行することができないという問題が生じており、これが、今なお多く発生している建設工事に伴い生ずる廃棄物の不法投棄や不適正処理の一つの要因となっている。
 そこで、廃棄物処理に係る適正かつ効率的な行政運営により建設工事に伴い生ずる廃棄物の適正処理を確保し、ひいては生活環境の保全に資するため、建設工事に伴い生ずる廃棄物については、元請業者が、事業者として当該工事から生ずる廃棄物全体について処理責任を負うこととし、当該廃棄物の処理についての法の規定のうち、排出事業者に係る規定の適用については、元請業者を事業者とすることとした(法第21条の3第1項)。
 これにより、元請業者は、発注者から請け負った建設工事(下請負人に行わせるものを含む。)に伴い生ずる廃棄物の処理について事業者として自ら適正に処理を行い、又は委託基準に則って適正に処理を委託しなければならないこととなる。
 また、下請負人は廃棄物処理業の許可及び元請業者からの処理委託がなければ廃棄物の運搬又は処分を行うことはできないこととなる。

実際のところ、筆者も行政官時代に数多く経験したことでもありますが、「元請の排出事業者責任」が条文化されるまでは、

無法者

ワシが下請で入った現場の産業廃棄物を、ワシの土地に置いて何が悪いんじゃ!

という主張をするアウトローが多く、「元請」と「下請」の義務と責任が不明確さゆえに、行政機関としてさらなる責任追及ができない、というケースが多々ありました。

しかし、2010年改正以降(施行は2011年4月1日から)は、廃棄物処理法第21条の3の存在のお陰で、「元請だけが排出事業者!」と問答無用で判断されることになり、元請に責任追及を行うことがかなり容易となりました。

ただし、いまだに、排出事業者としての責任を果たさず、下請に産業廃棄物処理を丸投げし続けた結果、不法投棄や無許可営業に関与したという容疑で、元請が立件されるといった報道が続いています。

元請の立場になる場合は、排出事業者の責任として、最低でも委託基準を遵守することをお忘れなく!