家電を運搬するイラスト
Q. 家庭から排出される家電は一般廃棄物であるため、産業廃棄物収集運搬業者は一切運搬することができない?

A. ✕:運搬できる。条件を満たす場合、産業廃棄物収集運搬業者でも一般廃棄物である家電を運搬できる場合がある。

今回のクイズは、廃棄物処理法だけでなく特定家庭用機器再商品化法(通称:家電リサイクル法)の条文を知っているかが求められました。

クイズ前半部分の「家庭から排出される家電は一般廃棄物であるため、」は、廃棄物処理法の分類上、間違いではありません。
後半部分の「産業廃棄物収集運搬業者は一切運搬することができない。」に誤りがあります。

家庭から発生する家電廃棄物は様々な種類がありますが、その中でも【家電リサイクル法】に分類される廃棄物は、注意が必要です。

まずは、家電リサイクル法において、「家電」とはどのようなものを指すのか確認しましょう。

(特定家庭用機器)
第1条
 特定家庭用機器再商品化法(以下「法」という。)第2条第4項の政令で定める機械器具は、次のとおりとする。
一 ユニット形エアコンディショナー(ウィンド形エアコンディショナー又は室内ユニットが壁掛け形若しくは床置き形であるセパレート形エアコンディショナーに限る。)
二 テレビジョン受信機のうち、次に掲げるもの
 イ ブラウン管式のもの
 ロ 液晶式のもの及び有機エレクトロルミネセンス式のもの(いずれも電源として一次電池又は蓄電池を使用しないものに限り、建築物に組み込むことができるように設計したものを除く。)並びにプラズマ式のもの
三 電気冷蔵庫及び電気冷凍庫
四 電気洗濯機及び衣類乾燥機

特定家庭用機器再商品化法施行令(平成10年政令第378号)
家電リサイクル法対象の家電

日本の高度成長時代に急速に普及したエアコン、テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫といった4品目が、家電リサイクル法の家電に該当することがわかります。

これらの製品は、大型で重く、内部に非常に固い部品が使われるなど、複雑な構造をしています。
また、一般廃棄物として市町村の大型ごみ処理施設での破砕や焼却による処分が難しく、そのほとんどが埋め立てられていました。

しかし、家電は、金属(鉄、銅、アルミなど)やプラスチックなどの有用な資源がたくさん含まれており、リサイクルルートを確立するため、家電リサイクル法が制定されました。

この「家電リサイクル法」の中で、今回のクイズを解く上で重要な廃棄物処理法の特例が定められています。

(一般廃棄物処理業者等に係る廃棄物処理法の特例)
第50条
 産業廃棄物収集運搬業者小売業者の委託を受けて特定家庭用機器廃棄物(産業廃棄物であるものに限る。以下「特定家庭用機器産業廃棄物」という。)の収集又は運搬を業として行う者に限る。)は、廃棄物処理法第7条第1項の規定にかかわらず、環境省令で定めるところにより、特定家庭用機器廃棄物(一般廃棄物であるものに限る。以下「特定家庭用機器一般廃棄物」という。)の収集又は運搬の業を行うことができる。この場合において、その者は、廃棄物処理法第6条の2第2項に規定する一般廃棄物処理基準に従い、特定家庭用機器一般廃棄物の収集又は運搬を行わなければならない。
2 廃棄物処理法第7条第1項の許可を受けた者が行う収集及び運搬並びに同条第6項の許可を受けた者が行う処分であって特定家庭用機器一般廃棄物に係るものについては、同条第12項の規定は、適用しない。
3 廃棄物処理法第12条第5項、第12条の3第1項及び第12条の5第1項の規定は、事業者が、その特定家庭用機器産業廃棄物を小売業者、第23条第1項の認定を受けた製造業者等又は指定法人に引き渡す場合における当該引渡しに係る当該特定家庭用機器産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の委託(産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者に対するものを除く。)については、適用しない。
4 一般廃棄物収集運搬業者小売業者の委託を受けて特定家庭用機器一般廃棄物の収集又は運搬を業として行う者に限る。は、廃棄物処理法第14条第1項の規定にかかわらず、環境省令で定めるところにより、特定家庭用機器産業廃棄物の収集又は運搬の業を行うことができる。この場合において、その者は、廃棄物処理法第12条第1項に規定する産業廃棄物処理基準に従い、特定家庭用機器産業廃棄物の収集又は運搬を行わなければならない。

特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号)

法第50条第1項では、産業廃棄物収集運搬業者が、一般廃棄物収集運搬業の許可の規定にかかわらず、家電リサイクル法の家電の収集・運搬を業として行えることになっています。
また、同法第4項に一般廃棄物収集運搬業者が、産業廃棄物を業として行えることにもなっています。

よって、産業廃棄物、一般廃棄物のいずれかの許可を取得していれば家電リサイクル法の家電に関しては、廃棄物処理法の規定に関わらずいずれの廃棄物も運搬できることがわかります。

ただし、ここで重要なのが、条文の赤マーカーに示した部分の限定条件です。
この規定が適用されるのは、全ての産業廃棄物または一般廃棄物の収集運搬業者ではなく、【小売業者の委託を受けて家電を収集・運搬する者】だけということです。

「小売業者」とは、大手家電量販店や街の家電販売店などのことを言います。

今回のクイズを正しい表現にすると以下のようになります。

「小売業者から委託を受けた産業廃棄物収集運搬業者は、一般家庭から排出される家電のうち、家電リサイクル法に該当する家電(エアコン、テレビ、洗濯機、冷蔵庫)を運搬することができる。」

家電リサイクル法以外の家電は小型家電リサイクル法で規制されていますので、興味のある方はご確認ください!