分別保管されていた「廃プラスチック類」と「木くず」を1台の車で回収する場合、受け取るマニフェストは1通で良い?
Q:分別保管されていた「廃プラスチック類」と「木くず」を1台の車で回収する場合、受け取るマニフェストは1通で良い?

A:マニフェストは「産業廃棄物の種類ごと」に交付する必要があるため、この場合は、「廃プラスチック類」1通「木くず」1通の合計2通のマニフェストを排出事業者に交付してもらう必要があります。
疑問

同じ車で一緒に運んでもらうのに、2通もマニフェストを準備するのは面倒じゃない?

いえいえ。
たしかに面倒に見えるかもしれませんが、廃棄物処理法で定められていることなので、そのとおりにマニフェストを交付しないと廃棄物処理法違反になります。

廃棄物処理法
第12条の3(産業廃棄物管理票)
 その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者(中間処理業者を含む。)は、その産業廃棄物(中間処理産業廃棄物を含む。第12条の5第1項及び第2項において同じ。)の運搬又は処分を他人に委託する場合(環境省令で定める場合を除く。)には、環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した者(当該委託が産業廃棄物の処分のみに係るものである場合にあつては、その処分を受託した者)に対し、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票(以下単に「管理票」という。)を交付しなければならない。

上記の「環境省令で定めるところ」は、

廃棄物処理法施行規則

第8条の20 管理票の交付は、次により行うものとする。
一 当該産業廃棄物の種類ごとに交付すること
二 引渡しに係る当該産業廃棄物の運搬先が2以上である場合にあつては、運搬先ごとに交付すること。
三 当該産業廃棄物の種類(当該産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨を含む。)、数量及び受託者の氏名又は名称が管理票に記載された事項と相違がないことを確認の上、交付すること。
四~五 略

となりますので、「産業廃棄物の種類ごとに(1通ずつ)交付する」ことが原則であることをお分かりいただけたと思います。

疑問

でも、世の中の産業廃棄物すべてが「単一の産業廃棄物の種類」で構成されているわけではなく、「複数の産業廃棄物の種類の混合物」だってたくさんあるわ!

たしかに、そのとおりですね。

たとえば、「電子機器」の場合、「廃プラスチック類」「金属くず」「ガラスくず」の3種類の産業廃棄物が混合していることになります。

このような場合に、「電子機器」は1台だけなのに、「廃プラスチック類のマニフェスト1通」「金属くずのマニフェスト1通」「ガラスくずのマニフェスト1通」と、合計3通のマニフェストを交付する場合、手間とコストが3倍になってしまいます。

そこで、環境省は、平成23年3月17日付環廃産発第110317001号「産業廃棄物管理票制度の運用について」という通知で、

第1 産業廃棄物管理票
2.管理票の交付
(1) 交付手続
③ 「産業廃棄物の種類ごとに交付する」とは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第2条第4項及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第2条に規定する産業廃棄物の種類ごとに管理票を交付することを原則とするが、例えばシュレッダーダストのように複数の産業廃棄物が発生段階から一体不可分の状態で混合しているような場合には、これを1つの種類として管理票を交付して差し支えないこと

「複数の産業廃棄物が発生段階から一体不可分の状態で混合しているような場合には、これを1つの種類として管理票を交付して差し支えない」という判断基準を示しています。

誰が考えても、上記の通知のように判断する方が、現実的かつ合理的ですので、一般的な行政運用としては、

「複数の産業廃棄物が発生段階から一体不可分の状態で混合している」産業廃棄物だけは、「1通のマニフェストに複数の産業廃棄物の種類を記載」することが認められています。

「電子機器」以外の具体例としては、建設現場に置かれた「コンテナ」に、すべての建設廃棄物を一緒くたに投入・保管し、「コンテナごと」建設廃棄物を回収・運搬してもらうという場合も、「コンテナに混合状態で入れられた建設廃棄物」は、「発生段階から一体不可分の状態で混合している産業廃棄物」に該当するため、「1通のマニフェストの交付」で足りるとなります。

ただし、「コンテナに入れられた建設廃棄物」を、積替え保管場所で分別し、

  • 「安定型品目はそのまま安定型最終処分場へ搬出」
  • 「管理型品目は中間処理業者の事業場に運搬」

と、中身の産業廃棄物の種類によって「運搬の最終目的地」が異なるような場合は、1通のマニフェストでは不足となり、それぞれの運搬先を指定した2通のマニフェストの交付が必要です。

このように、マニフェストの運用は、シンプルではありますが、判断ポイントを間違えると法律違反が起きやすい実務ですので、迷ったときは、

  • 産業廃棄物の種類ごと
  • 運搬の最終目的地ごと

という2つのポイントを慎重に判断するようにしてください。