Q:排出事業者が紙マニフェストを準備出来ていない場合、後で郵送してもらうことにすれば、収集運搬業者は先に産業廃棄物だけを回収しても良い? A:収集運搬業者には、紙マニフェストの交付がなされない産業廃棄物の引受けが禁止されていますので、紙マニフェストの交付が無い産業廃棄物を運搬すると違法となります。 |
「困っているお客様のために、書類手続きを後回しにして、まず目の前の産業廃棄物を片付けてあげるだけなのに、なぜ違法と言われないといけないのよ!」
困っているお客様のために、「書類手続きは後回しにして、とりあえず目の前の産業廃棄物を片付けてあげる」という行動は、「情に厚い」という意味では、道徳的と言えなくもありません。
しかしながら、廃棄物処理法では、産業廃棄物収集運搬業者や処分業者による、こうした手続き無視の行動を厳格に禁止しています。
廃棄物処理法第27条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
一~六 (略)
七 第12条の4第2項の規定に違反して、産業廃棄物の引渡しを受けた者
廃棄物処理法第12条の4(虚偽の管理票の交付等の禁止)
第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者若しくは第14条の4第12項に規定する特別管理産業廃棄物収集運搬業者又は第14条第12項に規定する産業廃棄物処分業者若しくは第14条の4第12項に規定する特別管理産業廃棄物処分業者は、産業廃棄物の運搬又は処分を受託していないにもかかわらず、前条第3項に規定する事項又は同条第4項若しくは第5項に規定する事項について虚偽の記載をして管理票を交付してはならない。
2 前条第1項の規定により管理票を交付しなければならないこととされている場合において、運搬受託者又は処分受託者は、同項の規定による管理票の交付を受けていないにもかかわらず、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しを受けてはならない。ただし、次条第1項に規定する電子情報処理組織使用義務者又は同条第2項に規定する電子情報処理組織使用事業者から、電子情報処理組織を使用し、同条第1項に規定する情報処理センターを経由して当該産業廃棄物の運搬又は処分が終了した旨を報告することを求められた同項に規定する運搬受託者及び処分受託者にあつては、この限りでない。
つまり、きっかけは親切心だったとしても、
管理票(紙マニフェスト)の交付を受けていないにもかかわらず、産業廃棄物の引き渡しを受けた(=運搬を引き受けた)収集運搬業者は、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(廃棄物処理法第27条の2)」という刑事罰の対象になります。
ちなみに、この条項は「(産業廃棄物の)引受け禁止義務違反」と俗称されていますが、同条項が法制化されたのは、2010(平成22)年改正の時からです。
その後、2017(平成29)年改正で、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が、現在の「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」へと引き上げられた経緯があります。
「後付けで排出事業者から産業廃棄物管理票を郵送してもらえば、書類上のつじつまは合うではないか!」と考える方がいるかもしれません。
産業廃棄物管理票の交付を受けずに産業廃棄物を運ぶ行為は(電子マニフェスト運用の場合を除く)、「運転免許を携帯せずに車を運転する」ことと同様と言えます。
車を運転する際にはその携行が義務づけられている以上、「ちょっと忘れただけです」という言い訳が認められることはなく、「3千円の反則金」の対象となります。
もっとも、「産業廃棄物管理票の引受け禁止義務違反」の場合は、「3千円の反則金」では済まずに、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」と非常に重い刑事罰が予定されていますので、運転免許以上に慎重に対処する必要があることをお分かりいただけると思います。
また、たった一人の「産業廃棄物管理票の引受け禁止義務違反」であっても、場合によっては、会社に対して「事業の全部停止○○日間」という行政処分が下されることが多々あります。
事業の全部停止処分期間中は、会社の産業廃棄物処理事業がほぼ行えませんので、売上が激減した結果、会社が賞与(ボーナス)が出せなくなるという事態も起こりえます。
きっかけは善意で始まった法律違反で、法律違反とは無関係な同僚・上司・部下の賞与が減少し、その方々が楽しみにしていた外食や旅行に行けなくなるかもしれません。
産業廃棄物管理票は「単なる伝票」ではなく、廃棄物処理法で運用の方法が定められている実務ですので、運転手の方のみならず、産業廃棄物処理企業で働く全員の方が正しい理解をしておくことが非常に重要です。
皆様の暮らしに直結するリスク要因でもありますので。