決算書をねつ造して不正に産業廃棄物処理業の許可を取得した場合は刑事罰の対象になる?

Q:決算書をねつ造して不正に産業廃棄物処理業の許可を取得した場合は刑事罰の対象になる?

A:「不正の手段により産業廃棄物処理業の許可を受けた者」は、廃棄物処理法第25条の「5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金またはこの併科」の対象になる可能性があります。

廃棄物処理法第25条は、同法の中でもっとも重い刑事罰を定めた条文ですが、「不定の手段により産業廃棄物処理業の許可を受けた者」は、「5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金またはこの併科」の対象になることが明確に書かれています。

廃棄物処理法第25条第1項

 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 略
二 不正の手段により第七条第一項若しくは第六項、第十四条第一項若しくは第六項又は第十四条の四第一項若しくは第六項の許可(第七条第二項若しくは第七項、第十四条第二項若しくは第七項又は第十四条の四第二項若しくは第七項の許可の更新を含む。)を受けた者
三~十六 略

環境省が平成30年3月30日付で発出した「行政処分の指針について」では、許可取消対象となる「不正の手段」を次のように例示しています。

第2 産業廃棄物処理業の事業の停止及び許可の取消し(法第14 条の3及び第14 条の3の2)
2 要件
(6) 不正の手段により第14 条第1項若しくは第6項の許可(同条第2項又は第7項の許可の更新を含む。)又は第14 条の2第1項の変更の許可を受けたとき(法第14条の3の2第1項第6号)

 「不正の手段」とは、例えば許可申請の際に許可申請書若しくはその添付資料(商業登記簿等)に虚偽の記載をすること、許可の審査に関する行政庁の照会、検査等に対し虚偽の回答をすること、又は暴行、脅迫その他の不正な行為により行政庁の判断を誤らせた場合などをいうこと。
 なお、本来許可を受けることができないような者が、事実関係を偽るなどして処理業又は施設設置の許可を受けた場合、当該者については到底適正な廃棄物処理は期待し得ず、不適正な処理を引き起こす可能性が高いほか、許可制度に対する信頼をも損なうなど、その悪質性は無許可営業に準ずるものと認められることから、平成17 年10 月1日からこの場合は直罰の対象とされたことにかんがみ、不正の手段により許可を受けたことが判明した場合は厳正に対処されたいこと。

上記の通知では「その添付資料(商業登記簿等)に虚偽の記載をすること」とありますので、許可申請書の添付書類の1つである「貸借対照表」や「損益計算書」等の決算書類を捏造し、許可を受けると、「不正の手段により許可を受けた者」に該当することとなります。

ちなみに、「決算書」以外の許可申請書の添付書類は下記のとおりです。

廃棄物処理法施行令第9条の2
2 前項の申請書には、次に掲げる書類及び図面を添付しなければならない。
一 事業計画の概要を記載した書類
二 事業の用に供する施設(積替え又は保管の場所を含む。)の構造を明らかにする平面図、立面図、断面図、構造図及び設計計算書並びに当該施設の付近の見取図
三 申請者が前号に掲げる施設の所有権を有すること(申請者が所有権を有しない場合には、使用する権原を有すること)を証する書類
四 当該事業を行うに足りる技術的能力を説明する書類
五 当該事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法を記載した書類
六 申請者が法人である場合には、直前三年の各事業年度における貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表並びに法人税の納付すべき額及び納付済額を証する書類
七 申請者が個人である場合には、資産に関する調書並びに直前三年の所得税の納付すべき額及び納付済額を証する書類
八 申請者が法人である場合には、定款又は寄附行為及び登記事項証明書
九 申請者が個人である場合には、住民票の写し及び法第十四条第五項第二号イ(法第七条第五項第四号イに係るものに限る。第十一号から第十四号までにおいて同じ。)に該当しないかどうかを審査するために必要と認められる書類
十 申請者が法第十四条第五項第二号イからヘまでに該当しない者であることを誓約する書面
十一 申請者が法第十四条第五項第二号ハに規定する未成年者である場合には、その法定代理人の住民票の写し及び同号イに該当しないかどうかを審査するために必要と認められる書類
十二 申請者が法人である場合には、役員の住民票の写し及び法第十四条第五項第二号イに該当しないかどうかを審査するために必要と認められる書類
十三 申請者が法人である場合において、発行済株式総数の百分の五以上の株式を有する株主又は出資の額の百分の五以上の額に相当する出資をしている者があるときは、これらの者の住民票の写し及び法第十四条第五項第二号イに該当しないかどうかを審査するために必要と認められる書類(これらの者が法人である場合には、登記事項証明書)
十四 申請者に令第六条の十に規定する使用人がある場合には、その者の住民票の写し及び法第十四条第五項第二号イに該当しないかどうかを審査するために必要と認められる書類
十五 申請者が令第六条の九第二号に掲げる者(以下「優良産業廃棄物収集運搬業者」という。)に該当するものとして法第十四条第二項の許可の更新を受けようとする者である場合には、次条第一号に掲げる基準に適合することを誓約する書面並びに同条第二号から第四号まで及び第八号に掲げる基準に適合することを証する書類

さて、これだけの重罰が予定されている申請書類の捏造を、あえてやる意味があるのかどうか。

自治体の審査基準にもよりますが、「債務超過」があったともしても、「債務超過=即、不許可」ではなく、「債務超過をどうやって改善していくか」という「改善計画書」等を補強資料として提出を求め、「税金の未納などが無ければ、許可を出す」という自治体の方が多いかと思います。

懲役刑付きの犯罪行為をわざわざするまでもなく、現状を正直に申告し、将来に向けてどう改善していくかを真摯に書面で説明すれば、無事に許可を取れることがほとんどです。

「嘘も方便」と後先考えずに申請内容を安易に捏造することは非常に危険です。